気軽な試打に潜む「落とし穴」を知れ!
その落とし穴を避けて通れる、ダイレクトWEBレンタル試打システムがスタート

一般的な勘違いに注意! 「試打」を安易に考えてはいけない
〜いい感じと出会えれば幸いだが、その反対が問題だ〜

みなさんは「ラケットの試打」を、どのように考えてらっしゃいますか?
テニスショップによる「ラケット貸出し試打」というシステムは、今から40年ほど前に渋谷の大手テニスショップにおいて誕生したと記憶しています。

もちろんそれまでも、各テニス専門店で「試し打ちのための貸出し」は行なわれていたでしょうが、非常に多くの各社モデルをあれこれ試せるだけ揃えたのは、このショップが初めてでしたし、そのおかげで、とても多くのお客さんが集まることになりました。その野次馬的お客の一人が筆者です。当時の渋谷は、日本でいちばん多くのテニスショップがある街で、そのなかでもココは特別でした。世界各国のラケットが揃うこの店に通い、ラケットやシューズに囲まれる充実感を味わってしまったのが、筆者が現在に至るきっかけだったような気がします。

さて、その「レンタルシステム」ですが、驚くほどの大人気で、目当てのラケットを一週間借りるためには、ずいぶん前からの予約が必要であり、それを待つのも楽しみの一つではありましたが、手軽ではなかったですね。また、やっと順番が回ってきて手にできたラケットでしたが、打ってみて気に入って購入したラケットは、ほとんどなかったように思います。

返却されると同時に貸し出されるのですから、前の人が使ったまんま。メンテナンスの暇などありません。ニューモデルのはずの試打ラケにはたくさんの傷が付き、張られているストリングがボヨボヨだったこともあります。そうなると、借りる前のドキドキ感は、さっぱりと醒めてしまいます。そうとわかってはいても、何度も試打ラケットを借りに通っていた「テニスボーイ」たちがどれほど多かったことか……。

現在でもテニス専門店には、この「試打ラケシステム」のしきたりが、しっかり残っています。なかには「試打ラケがなければラケットは売れない」と公言するところもあり、各種揃えて、親身の販売に努めるショップも少なくないですよね。

ただ! 試打ラケが多く揃っていればいい……というわけではないことを知ってください。

試打は「ラケット選びの最終判断」をする場です。試打してみて「やった、バッチリ!」というラケットと出会えればいいのですが、逆に試打でのフィーリングが悪ければ、どんなに憧れていたラケットでも、「う〜ん、違うか……」となって、購入することはないですよね。

問題は、ここにあります。本当は自分にマッチしているのに、「試打」してしまったがために、これを「ダメ」と思ってしまう危険が、試打ラケットには潜んでいるのです。

いつもと同じ状態で試打してこそ、そのラケットの本当の価値がわかる
〜ラケットを正しく判断できる試打環境の重要さ〜

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ショップは、ラケットを買ってもらうために試打ラケの貸出しサービスをしているはずなのに、気付かぬうちに、お客さんに「買ってもらえない状況」を突き付けてしまっていることがあります。それが「試打ラケ環境のミスマッチ」です。

筆者は長年の経験から、試打においてもっとも重要なのは「試打環境」と考えています。そこにはいろんな要素がありますが、いちばんは「ストリング環境」です。もしかしたら、ラケットフレーム自体はものすごく自分にマッチしているのに、張られているストリングが、ずいぶん前に張られたままということが、けっこう多いのです。こうした状態では、そのラケット自体を正確に判断することなどできませんよね。せっかく良いラケットなのに、試打の結果が残念なことになってしまいます。

さらにストリングのタイプです。今日のように、ナイロン系とポリエステル系が明確な差を持って両極的に存在する状況において、自分が普段から使っているストリングで試打できない場合には、じつは自分にドンピシャのラケットフレームでも、「NG」のレッテルを貼られてしまうことがあります。ラケットフレームが喋ることができたとしたら、きっと「濡れ衣だぁ!」と言うでしょう。

ですから試打ラケを借りる側も、いつも自分が使っているのと、どのくらい試打ラケ環境が違っているかを、よく知ったうえで打たなければなりません。できることならば、せめて自分が使うタイプのストリングが張られたラケットで試打することです。普段ナイロン系ならナイロンが張られているモノ。ポリ系ならポリで!これが違えば、あまりに自分のスタイルと離れているため、試打が意味のないものになっているかもしれません。

そして、ストリングが張られてから、どれだけ時間がたっているかも、知ることができればいいですね。「張られて間もない状態での試打」は、とてもいい感触を得られるでしょうが、むしろいつもより良すぎて、そのラケット本来の味わいを感じにくくさせてしまうかもしれません。つまり「いい感触は、ストリングが新しいおかげ」ということです。

安易に思える「無料の試打」ですが、気を付けなければ、自分にピッタリのラケット選びにとって、逆効果となってしまうということを知っておいてください。試打する側が気を遣わなければならないのは、「できるだけいつもと同じラケット環境で使ってみること」なのです。

「試打は実験と同じ」。いつもと同じ環境で打ち比べるのがいいよね
〜同じコートで、同じ相手とするから他との比較ができる〜

この仕事をしていると、新製品ラケットの発表があるごとに「新製品試打会」へ出かけます。東京の場合、たいがいは都内のインドアコートで行なわれますが、砂の入っていない人工芝コートという、ある意味、特殊な状況が舞台となります。これは、筆者にとってとっても不得意なサーフェスで、どのラケットを打っても「いいなぁ、これっ!」とは思えないのが困りもので、まともにラケットを評価することができません。

ですから筆者はそこで試打することはせず、後日、メーカーにお願いして試打ラケットを借り、いつも自分がプレーするコートで試打することにしているのです。クラブでプレーを楽しみながら試打……もいいのですが、どうしてもゲーム中心となってしまい、そのラケットで負けてしまうと、よけいな感情が入ってしまうため、「試打はスクールのレッスンで」と決めています。いつものコーチに球出ししてもらうことで、「変化する要素は1つだけ」に整えることができるわけです。

試打というのは、科学でいえば「実験」です。実験による比較は、漠然と行なうのではなく、他の条件を揃え、1つの要素だけを変えるからこそ「比較」ができるのです。ラケットの試打も同じですよ。同時に数機種を打ち比べるのなら、同じ環境での比較ができますが、そんなことはめったにないでしょう。まぁ、みなさんの試打では、ここまで拘る必要はありませんが、できるだけ同じ仲間に相手してもらって試打するくらいに気を配っていただくと、きっと「いい感じの試打」ができるでしょう。

まったく新しいからこそ、 その「新しさ」は、打ってみなけりゃわからない
〜噂は本当なのか? 【prince X】を実際に試すことができる〜

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とまぁ、試打についての留意点についてお話ししてきましたが、プリンスは、一般対象の試打会をもっとも多く開催しているメーカーです。ホームページのメニューバー【Gear】→【ラケットレンタル】と選んでいただくと、『話題の prince X など新製品ラケットのレンタルプログラム』のページが開きます。クリックしてみましょう!
プリンスでは「WEBラケットレンタルプログラム」をスタートさせ、全6シリーズを全機種セットで打ち比べられるサービスを開始しました。つまり、シリーズ全モデルを「同時に打ち較べ」できるのです。

これを利用するには、まず簡単な「会員登録」を行ないます。完了すると、貸出セットの表示があり、希望シリーズの「詳細へ」をクリックします。開いた画面には、レンタルセットの内容と、手数料、予約可能期間、注意事項などについての記載があり、カレンダーから「レンタル開始希望日」「レンタル終了希望日」を、3〜10日間で選択するシステムです。

レンタル料金は「無料」ですが、試打ラケの送料と返送料は実費としてかかります。これはサービスを受ける側として、当然、負担しなければなりませんね。同一シリーズをまとめて試打できること自体、めったにない情報獲得チャンスです。それを無料で享受できるのですから、送料くらいは必要経費として考えなければなりませんね。専門店で試打ラケを借りる場合、シリーズまるごとを借りて試打比較することなど、なかなかできないのですから。

レンタルできるのは【TOUR】シリーズ、【BEAST】シリーズ【BEAST98】シリーズ【prince X】シリーズ【EMBLEM】シリーズ【PHANTOM】シリーズの6シリーズで、それぞれにプリンスによって「最適ストリング」として選ばれているストリングが張られています。

とくに注目してほしいのは、昨年に発売され、その斬新な機能で話題となっている【prince X】シリーズです。2018 / 07 コラムを読み返していただくと、その詳細についておわかりいただけるでしょうが、ほとんどのプレーヤーが「フォアよりもバックが弱い」という現実に対応して、バックハンドストロークを強化してくれる夢のラケットとして登場したのが【prince X】シリーズです。

この性能・感覚は、実際に試して体感していただくのがイチバンだ! ということで、プリンスでは各種体験試打会を開催してきましたが、今度はそれを「自分のホームコートで・いつものパートナーを相手に」試すことができるようにしたわけです。

プリンスが、それぞれのラケットに「最適」と選んだストリングを、それぞれの最適テンションで張り上げた試打ラケットを、送料負担だけで、シリーズまるごと借りられる『プリンス・DEMOレンタルプログラム』は、自分のテニスに新しいパフォーマンスを取り入れたいと願うプレーヤーにとって、じつに有効なシステムと言えるでしょう。この機会を逃さず、積極的に申し込んでみましょう!

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー