あなたはO3のメリットを知っていますか?「食べず嫌い」はもったいない。 その画期的技術があなたにマッチしているかも!

パワー伝達経路としてのストリングホールとグロメット
〜 ストリングとフレームの唯一の接点がグロメットである 〜

みなさんが普段、ボールを打っているとき、「何がボールを打っている」のだと思っていますか? 多くの人が「オレだよ!」「ラケットだろ!」と答えると思います。ですが、インパクトという現象で、ボールを打ち出しているのはストリングです。

「打球」という行為と、「インパクト」という現象は、厳密に言うと別のものです。自分が振って、ラケットが打つ……のが「打球行為」。ボールがストリングに当たって弾き返されるのが「インパクト」。つまり、打っているのはあなた自身ではなく、ラケット、いやストリングなのです。

ラケットに注目すると、力がはたらくポイントは2つあります。その一つがグリップであり「力点」。もう一つが、実際にボールが接触するストリング面であり「作用点」です。ここには、みなさんが「ラケット」と思っている「フレーム」は登場しませんね。

そうなんです。インパクトの主役はストリングであり、ラケットのフレームは「力を伝達して、反発を支える」役目を果たすだけです。もちろん、フレームも打球結果に非常に大きく関与するわけですが、ストリングの大切さも忘れてはなりません。

力の伝達についてもっと細かく注目すると、ストリングに発生した衝突の力をフレームに伝達する経路としての「グロメット」を外すわけにはいきません。ストリングを通すため、カーボン繊維を組み合わせてできたフレームに穴があけられますが、ドリルであけられた穴に直接にストリングが接触すると、ストリングが傷付いて切れてしまいます。

それを守るのがグロメットです。ストリングとフレームの間に介在するグロメットは、打球性能・打球感覚を左右する大切な器官です。各メーカーが細かな技術で取り組みますが、基本的には、どれも似たようなもの……と言われてもしかたのない状況です。

ところが、プリンスのグロメット環境はちょいと違います。通常のグロメットを装備したフレームもありますが、もう一つ『O3』という特殊なフレームによるシステムがあります。簡単に言ってしまうと「グロメットがない」のです。先に「必要だ」と言っておきながら(汗)。

カーボン繊維を断ち切らず、ストリング孔を構築した【MORE】のスゴさ!
〜 「まさか……こんなやり方があったのか!?」 〜

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プリンスというブランドは、オリジナルの発想、開発力について、並外れたものを持っています。大ブレイクのきっかけとなったデカラケに始まり、長ラケもプリンスが最初。他社が新素材探しに躍起なのに対して、プリンスは根本から構造やコンセプトに向き合ってきました。そのプリンスが、筆者をブッたまげさせたのが【MORE】です!

みなさんはご存じないかもしれませんが、プリンスが日本に上陸した1980年代、誰もが憧れたのがプリンス【グラファイト】でした。当時の価格が¥90,000。めったなことで自分のものにできるラケットではありません。あらゆるプロ選手が、この【グラファイト】で闘ってきました。

その中でも、もっとも伝説とされているのが【初代グラファイト】です。その後のモデルと決定的に違うのは、「グロメットがない」ラケットだったのです。単独のピングロメットも、スリーブと呼ばれる連続グロメットもありません。ストリングが直接フレームに接する構造です。そのせいで、ストリング面にボールが当たる感触がダイレクトに伝わってくると評判でしたが、プリンス【グラファイト】は、次モデルからグロメット装備になったため、初代モデルは【幻のグラファイト】と稀少化されました。

それが約40年前。それから20年がたった2000年頃、筆者は衝撃の出会いをします。なぜなら筆者が「どうしたらグロメットレスで作れるだろうか?」と必至に考えていた時期だったからです。プリンス担当者から、発売前の準備でカタログ撮影をしているスタジオに呼ばれ、秘密裏に見せられたのが【TOUR NX GRAPHITE】。

パッと見には普通なんですが、じっと見ると「あっ!!!」。
……「グロメットがない!」
それは【MOREフレーム】という特殊な構造で、簡単に説明するなら「フレームを縦半分に割ったようなフレームを2つ作って、それを張り合わせてある構造」。しかもストリングのルート部を、2フレームを互い違いに張り合わせ、そこに隙間を作ることで、それをストリングが通る孔としたのです。つまりドリルによる孔あけによって、連続したカーボン繊維を断ち切ることがないため、強度を低下させることなく、しかもドリル孔ではないためストリングが傷付くことなく、ダイレクトにフレームに接することとなりました。

「あぁーっ、こうすればできるのかぁーっ!」
「スゲェ……」。それが筆者の正直な感想でした。ようやくラケットに本当の新時代がきた! 考え付いたこと自体がスゴいですが、プリンスはそれを製品化したのです。爪のアカほどの量の新素材を使いましたとか、グロメット孔を大きくしましたとか、そういうチマチマした見せかけではなく、プリンスが手掛けたこういうことこそが、本当の意味での「イノベーション」なのです。

【MORE】から【O3】への進化は、新しいラケットを生むことになった
〜 経験したことのない感覚に慣れない。でも明らかに進歩している 〜

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2つのフレームを貼り合わせた【MORE】フレームの内部構造は、従来は空洞だったフレーム内部の中央に、カーボンの厚い2枚の壁を構築することになり、とてつもなく強靭な剛性を生み出しました。当時のカーボン製フレームの開発は、いかに強度を高くできるか? に向かって走り続けていましたが、【MORE】フレームは一気に先へ進みすぎてしまいました。テニスプレーヤーたちは、経験したことのない剛性感に戸惑いました

しかし、プリンスが創造した新構造は、さらに新しいフレームシステム【O3】に発展します。【MORE】フレームが拓いてくれたグロメットレス構造は、手応え感でボールをコントロールしたいプレーヤーにとって、大きな魅力でした。それを継承しながら、フレームのストリングホールを巨大化させ、さらなるメリットをもたらしたのが、驚愕の新構造……【O3】だったのです。

フレームの横に大きな孔……というより空洞がいくつも並んでいる。当然、グロメットはなく、ストリングの可動域は大きく広がった。従来のストリング可動域は、フレームの内側に飛び出したグロメットの筒の内側に広がりますが、【O3】では、フレームの外側からがストリング可動域となります。

打球性能としては、それまでの見た目以上の反発性能が備えられることになりました。初めて使ったプレーヤーたちは、決まって「これってすごく飛ぶ!」と言いました。逆に考えれば、ヘッドの大きさを抑えてスイングしやすくしつつ、ダイレクトでハイパワーの反発性能が実現したのです。

さらに、フレームサイドに大きく開いた【O3】のおかげで、縦方向のスイングや、ヘビートップスピンで振り抜くときの空気抵抗が激減しました。それはスイングしたときに発生する風切り音の違いが象徴してくれます。【O3】フレームを高速でスイングすると、「ピューッ」という高音の風切り音がします。たとえかなり厚いフレームでも抵抗感がなく、躊躇なく振り抜くことができるのです。

感覚的に、これまでとどう違うのか?
筆者の個人的な感覚としては、従来システムでは「フレームが機能してボールを打ち出す感じが強い」だったのが、【O3】フレームでは「ストリング面がボールを打ち出してくれることをはっきりと感じる」というのが素直な表現です。まるで違うんです!
そしてその機能性が進みすぎてしまい、従来の感覚にズッポリと慣れてしまっているプレーヤーには、着いてこられない人も少なくありませんでした。

しかしプリンスは、【O3】システムを放り出すことなく、その余りある効果を調整しながら、現在も提供し続けているのです。これは素晴らしいことです。もしも【O3】がなくなると、「初めて使ったラケットが【O3】だった」というプレーヤーや【O3】に慣れてしまった人に、時代を逆行するフレームを使うことを強いることになるからです。彼らにとって、進んでしまった時計を巻き戻すことなどさせたくありません。

長年にわたってプリンスを見ていると、このブランドには、どこか「責任」とか「誠意」というものを感じます。「超新機軸」を派手に謳いながら、売れないと見るや、まるでなかったかのように廃番にしてきたブランドが、どれほどあったことか。それを気に入って使い始めたプレーヤーのことなんか、微塵も考えません。プリンスは海外ブランドですが、そういう点では、どこか日本的な感じがしますね。

進化した現代【O3】は、同一モデルに通常グロメットと並存
〜 どっちを選ぶ? 独特な打球性能は体験しなけりゃ 〜

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そんなわけですから、他所のメーカーでは「効率的でない」と排除されることも、プリンスはやってしまいます。たとえば、【BEAST 100】や【TOUR 100】には、通常のグロメット装備モデルと、【O3】をさらに進化させた【New O-Port】装備モデルの両方を揃えて発売しています。

基本的には同じフレームでありながらも、反発システムが大きく違っているこれらのモデルは、はっきり言って、「まるで違うラケットだ」です。それは打ってみれば、かならずわかります。どちらを選択するかの判断は、あなたが握っているのです。

これまで多くのラケットを使ってこられたプレーヤーであれば、外観高でおおよその打球性能を把握することはできるでしょう。しかしながら【O3】の搭載・非搭載の違いについては、まず体感してください。きっと「えぇっ? こんなに違うの……」と感じるはずです。そのうえで、あなたにとってどちらがマッチしているか、自分の感覚だけでなく、コーチや友人、パートナーに打球結果を見てもらい、客観的にあなたにマッチしているほうを選んでください。

以前にも報告したとおり、より多くの方に、いつもの環境で試打していただけるようにと、プリンスでは「レンタルプログラム」を展開しています。送料の実費だけで、貴重な試打体験をすることができます。この機会を利用して、ぜひ通常バージョンと【O3】バージョンを打ち較べてみてください。きっと、新しいラケットの可能性を感じていただけることでしょう。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー