Prince Monthly Column

2019/08/09

赤く迸る獰猛さで、ライバルをシバき倒す!
最先端スタイルに適応して面上部のブレを制御。 スイングパワーのすべてを無駄なく使う。

テニスラケットはつねに最先端適応を目指す
〜 現代の主流になりつつあるスピン系強打 〜

テニスプレーヤーにはそれぞれのプレースタイルというものがあります。ウッドラケット時代のテニスというのは、ラケットの素材的な反発性能の低さと、約70平方インチというフェイス面積の小ささのせいで、普通にネットを越してラリーするのさえむずかしいスポーツでした。しかもグリップの常識は「イースタングリップ/コンチネンタルグリップ」ですから、インパクトに力を込めるのがたいへん。超うすいグリップで、「ど・フラット」な面でボールを押し返しなさい! と教えられましたから、それはもう、現代のテニスとは別のスポーツでしたね。

そんな「修行みたいだったテニス」を「みんなのテニス」にしたのがプリンスのデカラケでした。初めてのラケット革命は、その後のラケットを進化させ、反発力増強、軽量化、堅牢化という流れの源流となったのです。もしもあのとき、プリンスのデカラケが誕生していなかったら、テニスの進化はもっと遅れていたかもしれません。

ラケットフレームという道具が進化したおかげで、テニスはとてもラクで楽しいスポーツとなりましたが、その一方で「過激な競技」へと導くことにもなります。反発力増強によるスピードアップ、軽量化によるスイング高速化が、テニスの競技スタイルを変えたのです。

昔の「流儀的な基本」は必要ないとされ、グリップもインパクトで力を込めやすいウェスタングリップが主流となり、「面の真ん中で、ボールを押し出すように打ちましょう」という教えは、元気溢れる若者たちに「意味不明〜」と笑われます。そりゃそうです……彼らがそのとおりに打ったら、打球はみんなバックフェンス直撃ですもん。

カーボン系ラケットはどんどん高反発となり、プレーヤー側もまた肉体的にパワーアップしていますから、昔どおりの広さのテニスコートに打球を収めるためには、2つの方法しかありません。「飛ばないストリングを使う」か「猛烈なトップスピンをかける」かです。プロは両方やってますね。なんだか「足し算」なのか「引き算」なのか、わかんなくなってきちゃってます。

インパクトの位置も変わってきました。ストリング面がもっとも大きくたわむ「フェイスの真ん中」で打つよりも、たわみが小さくてボールを強く潰せる「フェイスの上部」をメインに使い、強烈なスピンを与えるために擦り上げるように打つわけです。スイングによるラケットの円軌道は、フェイスセンターよりも、先端側のほうがスイングスピードが高速となり、スピンをかけやすいわけですから、とても理に適った打ち方と言えるでしょう。

こうしてプレーヤーのスタイルが変化してくると、またまたラケット側がそれに対応しようと変化します。「フェイス上部で打つことを想定し、そこでのパワー増強、面安定性向上」といった機能を搭載します。ラケットメーカーは新しいスタイルにおける性能アップに邁進し、そのスタイルでの戦力向上を目指すプレーヤーは、その新兵器を手に入れようとします。

これはもうね……追いかけっこなんです。でも、そうしてテニス道具は進化してきました。いったん進化したものは、逆戻りできないものです。対戦する相手たちが最先端のテニスをするなら、自分も対応していかなければならず、そこにおいて少しでも相手よりも優れたものを使うことで、力とスピードで優り、肉体的・精神的に楽になった余力で、脳の活用領域を増やして、戦略的に優位に立とうとするのです。

自分の意図をダイレクトに伝えてくれる道具
〜 【BEAST】への信頼と進化への期待 〜

真紅のBEAST

こうした最先端スタイルにマッチするプリンスラケットが【BEAST】です。スペック的には「黄金スペック」ゾーンの超売れ筋モデルです。
フェイス面積:100平方インチ、フレーム重量:300グラム、フレーム最大厚:26ミリ前後という3つのスペックが揃ったものを「黄金スペック」と名付けたのは筆者ですが、2007年に名付けて以来、その呼び名が一般化して12年たちますが、いまだにこのタイプは各メーカーの最大ボリュームゾーンを占めています。

鮮烈な「赤」を纏った新しい【BEAST】は、従来モデルとは形状まで変わったように見えますが、じつは従来とまったく変わっていませんから、安心してください!
長年、プリンスのラケットを使ってらっしゃる方ならばご存知かと思いますが、【BEAST】の前モデルは【HARRIER】で、「赤」のイメージはこのときから載せられました。もう少し遡ってみたときの源流モデルは【WARRIOR】、そして【BLACK】の血も流れていて、この時代から愛用されている方は、ずっとこの流れを辿ってらっしゃいます。

プリンスラケットを使われている方は、「ずっとプリンス」というケースがとても多いように感じるのは、気のせいなのでしょうか?
それは「あの形が好き!」という人が多いからではないかと思うんです。あくまで個人的な感想なんですが、あらゆるラケットの中で、正面形状がいちばん美しいと思うのは『プリンス』です。コラムを書かせてもらっているから……といったお世辞でもオベンチャラでもありません。他のメーカーの方にも、堂々と言えます。

そして、プリンスは「裏切らない」というイメージも持っています。あの形状をずっと守ってくれているところもそうですが、基本的な打ち味が極端に変わってしまうことがないところなど、安心して使い続けることができます。【BEAST】というラケットの性格を知っていれば、自分の意思を伝えやすいし、そのとおりの結果を出してくれます。
ラケットとの信頼関係……大切ですね。

狙ったのは「面上部のブレを抑える」こと(ATS)
〜 エネルギーを無駄なく伝えて、ボールをシバき倒す 〜

ATS

今回の新【BEAST】で変わったところは、フレームの斜め上部、いわゆる「2時・10時」の位置に、新しいコンストラクションが加えられています。前モデルではシャフトに組み込まれることで、シャフトの剛性をコントロールし、長い球持ちを感じさせつつ、しなりからの戻りが早くなるというスーパー素材『テキストリーム×トワロン』ですが、これを「2時・10時」にも組み込んだのです。

「アンチ・トルク・システム=ANTI-TORQUE SYSTEM(ATS)」と名付けられたこの構造が狙ったのは「フレーム上部の面安定性を高めること」です。こういったワードはもう聞き飽きたよ……という方がいらっしゃるかもしれませんが、それは「実感できていないから」ではありませんか?

今、プリンスでは、おそらく史上最大の試打キャンペーンを行なっていて、とてもたくさんの一般プレーヤーのみなさんに試してもらっています。そこで集められた声を聴くと「今度の新しい【BEAST】は、たしかに先がブレなくて、パワーアップしてくれているように感じる」というものが多いのです。前作と新作での違いは1点だけ。それによってこれだけの差が生まれるということは、『テキストリーム×トワロン』が効いているということですね。

試打された方が「パワーアップ」と感じられたのは、おそらく「パワーロスがない」ことだと思います。ラケットのフレームというのは、基本的に「フェイス中央に当たったときに理想的な変形→戻りをする」ように設計されてきました。ですから、そこから離れたところに当たってしまったときには、その近くのフレームにかかる力が偏って大きくなり、面に歪みが生まれて、「ブレる」感じとなります。

この「ブレ」がエネルギーロスなのです。簡単に言うと、フレームがインパクトの力に負けてしまっているわけです。もしもここをブレさせずにインパクトを支えることができれば、エネルギーロスは減り、より有効な打球となって弾き返されていきます。

しかも打球の方向性が安定して、当たった面に素直なリターンができるのです。トップ側で猛打する打法が多用される「若くて獰猛なプレーヤー層」では、ここをブレさせないことにどれだけのメリットを感じてくれることか!
そう……赤き獰猛さが憑依し、あなたは【BEAST】と化す。

明確でわかりやすいラインナップがプリンスの魅力
〜 【BEAST】+【スペック表示】がモデル名 〜

BEAST104

これまで何度も話してきたことですが、今日のプリンスラケットラインナップは、ユーザーにとって、とても親切です。昨今、どこのラケットも「ファミリー型ラインナップ」といって、同じ名前が付いていながら、重さやスペックなどを変えて「兄弟モデル」としてシリーズを組んでいます。ときにはスペックが違いすぎるのに同姓を名乗り、「それってハトコよりも血縁が薄いんじゃない?」というものも末席に加わったりします。

ようするに、「苗字」+「名前」みたいなもんですが、名前の違いを見ても、その素性を知ることがむずかしいわけです。プリンスもかつてはそうしたネーミングをしていた時期もあったと思いますが、今は明解に「苗字」+「素性」で名乗っています。

【BEAST 100】と【BEAST O3 100】が双子モデルであり、それぞれに「300 g」と「280 g」のスペックがあると直感的に理解できます。「○○は300 g」「□□は280 g」「△△は260 g」などと、とカタログと付け合わさなくてもいいのです。重量の差を別相手無にすることで、ショップにたくさん並ぶようにする方策なんでしょうが、一般ユーザーに対しては、かなり不親切なやり方だと思います。ちなみに【BEAST O3 104】は、シバくスタイルよりも、ダブルスなどのレスポンスタイプで、従兄弟モデルというところでしょう。

そういえば【BEAST】には遠縁の【BEAST TEAM】という親戚がいます。しかしプリンスでは、はっきり「別シリーズ」として位置付けていますね。本家と分家という感じかな(笑) エントリーモデルからちょっとステップアップしたいプレーヤーへの提供です。

長い間「これってイイよっ!」という記事を書いていると、「なんでもかんでもイイって言うんだろ」という野次が飛ぶのですが、誰にとっても同じようにイイというわけではありませんよ。今回の【BEAST】では「先側で打って、ボールをシバき倒す」ような、力が溢れ出ちゃうプレーヤーに向いているわけです。もう少し厚く当てて、楽に伸びのあるボールを打ちたいというプレーヤーには【X】という選択もあるわけです。

そうそう、うっかりしてました。新【BEAST】は、前モデルよりも ¥2,000 安くなってるんですね! 企業努力です。この機会に、ぜひ……試打を!

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。
試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー

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