ごく普通のラケバじゃん!いやいやじつは中身で勝負。移動プレーヤーが使用する合理性から組み上げられた『テニストランスポーター』!

ラケバをうまく使うためのバッグ・イン・バッグ作戦……
〜 でもこいつには隠し技がメッチャあるんだなぁ 〜

ラケットバッグ

前回、「ラケットバッグからバックパックに主流が移ってきた」と話しましたが、ラケバが消えてしまったわけではありません。これからのラケバは、生き残るために、その姿を少しずつ変化させてきているのです。

これは個人的な印象に過ぎないかもしれませんが、ラケバって大きいせいで、フニャフニャしちゃうところがあります。荷物をたくさん詰め込んで、バッグをパンパンにしてしまえば、まぁ見栄えは良くなるんですが、中身がスカスカ状態だと、外形がいびつになって、なんだかだらしなく見えてしまうんですよね……。

バッグに柔らかい素材を使えば、中になんでも詰め込める気がするし、バッグ自体を軽く仕上げることができます。でもラケットバッグらしい形が出づらいんです。ですから、ラケットバッグを選ぶときには、まず「どのくらいの荷物を入れるかを考慮し、大きすぎるものは選ばない」のがいいと思っています。

プリンスラケバのハイエンドシリーズ「TOUR Series」には「6本入り」と「12本入り」の2サイズがあり、プレーヤーの使用環境によって最適なサイズを選び分けることができます。このシリーズはテニスを競技としてやっているプレーヤーのためのモデルで、ラケットをかならず複数本持ち歩くためのスタイルバッグと言えるでしょう。

もちろんみなさんご承知とは思いますが、「6本入り」に「マジで6本入れて持ち歩く」という人はほとんどいないですよね。プロ選手は、ラケットバッグを「ラケットオンリー」で使いますが、一般プレーヤーが使用する場合は、あくまで「6本入る容量」ということで、中身の大半がウェアやシューズ、タオル、ボール、アクセサリー小物などで満たされます。

このように、いろんなもので満たされるラケバですが、みなさんはラケバを使っていて「ストレス」を感じたことはありませんか? たしかにたくさん入るのですが、さて何かを取り出そうとするとき、中をゴソゴソと必至に探ることになってませんか?

マメな方は、ウェアやタオルなどは「大きめのランドリーネット」に、小物は種類別に「小型ポーチ」などに分けて収納し、いわゆる「バッグ・イン・バッグ」方式で、目的の荷物をすぐに取り出せるようにしているでしょう。ただそうでもない人は、あえてそんなことはせず、どんどん放り込んでしまうのでは……。荷物はラケバの中でシャッフルされ、どれがどこにあるのかわからなくなります。

ですから、ラケバ使いには「バッグ・イン・バッグ」方式をオススメします。今では「100円ショップ」で、多種多様なバッグが安価で入手できますから、自分の持ち物に応じたサイズのバッグを複数揃えたって、安いものじゃないですか。デッカい袋状のラケバも、こうして整理整頓して使えば、コートサイドでラケバの中を引っ掻き回して大捜索しなくてすみますよ!

……う〜ん、そりゃそうなんですが、テニスコートヘ行くときに常備しておきたい小物って、いつもバッグの同じところにあってくれたら嬉しくありませんか? ラケバから小物用ポーチを取り出して、それを開けて探すよりも、「あれはあそこにある!」とわかっていれば、一発アクセス、即取り出し可です。それを実現してくれているのが、プリンスラケットバッグ「TOUR Series」なのです。

形崩れしない「カチッ」とした「自立式ラケバ」
〜 硬いサイドパネルが颯爽とした背負い姿を作る 〜

ラケットバッグ

筆者がまず注目したのが、バッグの両側面にセットされている「大型モールドパネル」です。モールドパネルというのは、「型に入れて成型した」という意味で、ようするに「硬い」わけですね。先に話したとおり、大きなラケバはフニャフニャになりがちで、形崩れしやすいんですが、両側に硬いモールドパネルがあることで、全体的に形崩れしにくくなります。そのおかげで「パリッとスタイル」で、ラケットバッグを背負うことができますね。

そしてもっと特徴的なのは、モールドパネルの内側構造。簡単に表現すると「ポケットがいっぱい!」です。片側のパネル側には全面で使える大型メッシュポケットが、ファスナー付きでセットされています。大きくて薄いもの……たとえば雑誌とか、大会プログラムなどはここに収納することができます。

そしてその対向側には、横幅26cmの中型メッシュポケットが2つ装備されています。グリップテープなどのコートサイドアクセサリーや、ハンドタオル、ドリンクパウダーなどなどここに入れておくと、バッグ内部を探ることなく、すぐに取り出せて便利ですね。

そしてバッグの反対側にも、同じ形のモールドパネルが付属していますが、中の収納仕切りが違います。こちらはパネル側には中型メッシュポケットが1つと、横幅10cmの小型メッシュポケットが3つ並んでいます。そして対向側には横幅26cmの中型メッシュポケットが2つ並び、ちょっと厚みのある小物を入れることができるという充実ぶりです。中型メッシュポケットには、もしものときの張り替え用ストリングなどを常備しておけば安心ですね。

またモールドパネルの硬さのおかげで、ポケット内にちょっとかさばるものを入れても、外側に膨らんでパンパンに見えてしまうことがありません。スマートにラケバ姿を作ってくれるのが「モールドパネル」なのです。

いつも使うラケバにいろんな小物を常備しておけば、なにかあったときにも対応でき、慌てることがありません。これこそが、大きなラケバを担いで移動するメリットであり、バックパックには真似できない、オールマイティーな収納力なのです。

あなたは細々と気配りされた各部の「超便利」に気が付きますか?
〜 使いやすくて工夫が詰め込まれた合理性の塊 〜

ラケットバッグ

さて、バッグ全体の構造にも、十分に気が配られていることを説明しておかなければなりません。まず「シューズポケットの位置」ですが、大方のラケットバッグでは「バッグの底辺側」(背負った状態での下部)にありますが、「TOUR Series」のシューズポケットは「上部」に組み込まれています。その理由ってわかりますか?

ラケットバッグというのはたしかにラケットの形をしていますが、ぴったりそのままの形状ではありません。ラケットを収納すると、背負った状態での上部にグリップ側がくるので、大きな空きスペースができますね。通常、バッグを背負った状態では、ここが完全な空洞になってしまい、他の荷物はどんどん下へ移動します。この無駄スペースを解消し、そこをシューズポケットとして活用しようというのが開発者の狙いで、このような「シューズポケット上部スタイル」としたわけです。

これはシューズにとってもまた嬉しい構造でした。シューズポケットが下部にあると、中の荷物の重さでシューズが潰されてしまいますが、こうするとシューズが上から吊るされた状態になり、形状をストレスなく保つことができるわけです。テニスシューズはラケットに次ぐ高価格アイテムであり、消耗品でもあります。ですから、できるだけ長持ちするように大切に扱ってあげたいものですね。

さらに大容量のメインルームには、大きなタオル、ウォームアップ上下など、かさばるものを収納しますが、先に述べたとおり、こうしたものは下部に下がって溜まってしまいがちです。これを防ぐ目的で内蔵されているのが「インナーセパレーター」です。出荷時のデフォルト状態では、このセパレーターは片側にピタッと貼り付いていて、その存在に気が付きませんが、ベルクロテープを剥がして、反対側に貼り付ければ、バッグ内部は2つのパートに仕切られ、バッグ下部に荷物が溜まってしまうのを防ぐことができます。

ラケットバッグ

もちろんラケット収納部の内側は、真夏の暑さ・真冬の寒さからラケットを守る「サーモリフレックス」仕様の打ち張りが施されています。バッグを車内に置いたままにしておいても(しないほうがいいですが)、ラケットやストリングが温度の影響を受けにくいのです。

そしてメインルームとラケットルームの間には、大型のスリット型フリースポケットがあります。なんとA4サイズの雑誌も入りますし、素材がフリースなので、たとえタブレットを裸で入れておいても、画面が傷付かぬようにとの気配りです。これはタブレットを持ち歩く方にはありがたいポケットですよ! ここに収納すれば、使おうと思ったときにすぐに取り出せますし、内部では宙吊り状態となるので、バッグを置いたときでも直接の衝撃を受けることがありません。

ラケットバッグ

このスリットポケットはバッグを立てたときの上部にも小型のものが内蔵されていて、スマホなどをここに入れておけば、すぐに取り出して使うことができます。こうした使いやすさ・取り出しやすさのことを、筆者は勝手に「アクセスメリット」と呼んでいます。ラケバはデカいだけに、繊細な工夫が軽視されがちであり、開発者も工場も「コストが上がるから」と言い訳して、細かいことをやりたがりません。

しかし、こうしたことが大切なのです。安いからといって、使い勝手の悪いラケバをちょくちょく買い替えるよりも、たとえちょっとくらい高価であっても、使用するうえでのストレスが少ないラケバを選んで、長く使うという選択は、「合理的かつ経済的」ですね。

ラケットバッグ

最後に筆者の気持ちをワシ掴みしたのが、肩ストラップの上側に装備された「可動式3点ショルダー」というシステムです。これは、バッグの重さのために背中でバッグがズリ下がってしまうのを防ぐストラップ固定の構造で、登山用バッグでは以前から採用されていますが、テニス用ラケバで使われるのは、とても贅沢なものです。

「可動式」というのは、背負う人の肩幅に合わせて、ストラップを固定するバックルが回転する構造で、使用者の背中から肩へかけてストラッブが歪みなくフィットし、そのうえバッグへの縫い付け部の負担を減らてくれる効能があります。

こんなことまでやるのはプリンスラケバ「TOUR Series」が、「細やかな気配りができる日本企画アイテム」だからです。海外企画では、たかがテニスバッグに対して、ここまでの気の遣い方はけっしてされません。高価アイテムには「高価なだけの価値」があるのです。安易に安さで選んでしまう前に、これらの「日本企画ならではの気遣い」を知ろうとしてください。そしてそれが、自分にとって十分なメリットがあると思ったら、ちょっと無理しても「買い」ですよ。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー