Prince Monthly Column

2019/10/15

これってホントにテニス用バックパック?
マニアックな微に入り細に入り設計、と贅沢素材で作られた『テニス移動にも使える薄角型ビジネスバッグ』!

テニス用バッグの主流が、ラケバからバックパックスタイルへ
〜 たくさん入りゃぁいいってもんじゃなくなってきてる 〜

ラケットバッグ

テニス道具専門のライターという仕事柄、メーカー、ショップ、トーナメント会場、いろんなところでテニス道具市場の動向について話す機会が多いわけですが、今年いちばんのニュースは「バッグの売れ行きが、ラケットバッグからバックパックへと移行してきている」というものです。

これはどいうことかと考えるに、いかにも「テニスしにいきます!」というスタイルよりも、さりげなく移動する感じのほうがスマートかなと思う人が増えてきているんじゃないでしょうか。ラケットバッグにはラケットバッグの素晴らしさがあるわけで、学生選手や草トープレーヤーなどには絶対に必要なアイテムなんですが、「バックパックで事足りるじゃん」という人が増えてきているわけですね。

それに輪をかけて、昨今は一般生活においても、史上まれに見る「バックパック旋風」が吹き荒れています。外出すれば老若男女、学生もビジネスマンも、オジちゃんもオバちゃんも、みぃーんなバックパックを背負ってますよね。背中にビシッとまじめそうに背負っているオジちゃんがいれば、ストラップを長ーくして、お尻のあたりに小さな袋がダラ〜ンと下がっている若者もいます。「あんな小さい荷物なら、背負う必要ないだろ!」と思ってしまうのは、筆者だけでしょうかね(笑)

最近は「バックパック」なんてオシャレそうに呼びますけど、旧く日本では「背負子(しょいこ)」「背負籠(せおいかご)」「背嚢(はいのう)」と呼ばれ、今日では「バックパック(英語)」「リュックサック(ドイツ語)」「デイパック(英語)」「ナップサック(ドイツ語)」など、背負うものは多種多彩です。ところで、上のカタカナ4つの違いって、みなさんご存知ですか?

大きさ的な定義としては「バックパック」>「リュックサック」>「デイパック」>「ナップザック」となります。バックパックがいちばん大きいなんて、意外に思う人がいるかもしれませんが、そもそもバックパックとは金属フレームが内蔵されるような、登山用の縦長で大容量のもの。正確には、登山者が背負うのがバックパックなのです。

それに対して「リュックサック」ですが、ドイツ語で「rucksack」。バックパックほど大型ではなく、軽い登山やハイキング、遠足なんかに背負っていったのがリュックサックです。そして「デイパック」は、現在のバックパックと呼ばれているバッグ群のことです。リュックサックよりももっと小型・シンプルで、おもに日常生活の移動用に使うことをイメージして作られたバッグですね。

そして最小型が「ナップサック」で、これは形がはっきり違います。バックパックやリュックサックは上部にフタ的なフラップが付いていますし、デイパックはファスナー型ですけど、ナップサックは「巾着型」で、上部を紐でキュッと閉じるタイプで、シューズ袋を背負っちゃうような、非常に簡易なスタイルです。

ですから今日のテニス用バックパック群のなかで、本来のバックパックにいちばん近いのは、縦型ロングタイプのもので、プリンスならば【OD841 ラケットバッグ ロングタイプ】と【AT973 バックパック ロングタイプ】ですね。

とはいうものの、今ではみんなひっくるめて「バックパック」と呼ぶのが普通になってきているので、素直にそれに従いましょう。4種の中で、いちばん語感的な響きがいいですものね。

さて、話を元に戻しましょう。テニスでバックパックスタイルが増えてきたのは「ラケットを別に持つ」という人が増えてきたせいもあるでしょう。その引き金になったのが「スライディングバッグ」……ラケットを買ったときに付いてくる、あの布製の袋ではないでしょうか。あれがあるために、ラケットだけを手に持ったり肩に掛けたりすることができ、「ラケット突き刺しスタイル」という旧式形態から脱却できるため、若い人もバックパックを選ぶようになったのだと思います。

バックパックは薄型がいい……ってなぜ?
〜 バッグは移動ツール。コンパクトなほどいい 〜

ラケットバッグ

とはいっても大容量バックパックも魅力があります。筆者が大好きだったのがプリンス【バックパックL】というアイテムで、これは、ラケットは外部のフラップ内側に固定するタイプですが、「大きいのに、薄い」というのが魅力でした。テニス用としてではなく、普段使いにも便利で、2泊くらいの出張ならば十分なくらいの収納力があります。

最大の特徴が「薄い」ってことですが、とにかく移動に便利です。バックパックを背負った方……とくにパンパンに膨らませたバックパックを背負ったまま電車に乗る方は、周囲から迷惑がられます。もちろん電車に乗るときはバックパックは前に抱えるのが常識ですが、デパートやスーパーなど店舗内の狭い通路では、薄型バックパックは理想的です。

そうなんです! バックパックは、テニスするときだけに使うものではなくなってきています。完全に「これはテニス用のバッグだ」としている方もいるでしょうが、「普段の生活にも使いたい」という人が多くなってきていることは実感できます。もしもテニスで使うときは、シューズと着替え程度のものが入ればよく、便利な兼用バッグとして利用する人をたくさん知っています。

ただ仮にも「テニス用バッグ」ですから、ラケットを収納できるスペースも備えているのが、テニスブランドが販売するバックパックなのです。ラケットも入れられるメインの移動用バッグにもできるし、別に大きなバッグを持っているときのサブバッグとしてバックパックを活用している姿も見かけます。

そんなシーンに最適なのが、薄型バックパックのプリンス【BK947 バックパック ボックスタイプ】です。これは明らかに先に述べたような利用者をターゲットに作られています。見るからに「これってテニス用じゃないでしょ」という外観ですが、シューズポケットも、ラケット収納パートも備えていて、機能的には申し分ありません。これはもう、日常でも使える多用途テニス用バッグ。いや……テニス用でも使えるビジネスバックパックかも。

「ここが違うぞ!」プリンスの薄型角スタイルバックパック
〜 細部まで洗練され、丈夫で贅沢なフリースタイルタイプ 〜

ラケットバッグ

この【BK947 バックパック ボックスタイプ】のベースとなっているのはプリンスの人気バックパック【OD847 バックパック ボックスタイプ】でしょう。それが中容量テニスバッグであるならば、これはそれをさらに薄型にして、日常使いの方向へ大きく振っていることがよくわかります。筆者のように、日常の仕事用にバックパックを使っている人間には、なんともありがたい仕様なのです。

まず外観・外装ですが、スペックデータ上では【OD847】の厚さに比べて「1cm」しか薄くなってないのですが、かなり薄くなっている印象があります。感覚的には【BK947】のほうが「3cm」くらい薄いような……。

その理由はきっと「角型がカチッと出ている」からだと思います。それを助けているのが素材です。【OD847】は柔らかいポリエステル素材なため、角型でありながら、ふっくらとした軽い丸みを感じますが、【BK947】は、しっかりした厚みのあるナイロン織り生地で、非常に高い強度を持つのが特徴です。ナイロン製ビジネスバッグを流行させた「あの」高級ブランドの素材に引けを取らないくらいの印象で、とてもしっかりしています。

黒いナイロン生地というのは、爪などで引っ掻くと、そこが白くなって痕跡が残るのですが、【BK947】に使われているナイロン素材では、まったく跡が残りません。このしっかり感が角型を保ち、高級感を醸し出しているのだと感じます。

正面ポケットもきわめてシンプル。薄い財布や定期入れなら、ここに入れても外面に膨らまないため、使い勝手のいいものになっています。正面に向かって右サイドには、これまで同様にシューズポケットが装備され、逆の左側には、全体と同じ素材で、ドリンクポケットがあしらわれています。

ほとんどのバックパックが「メッシュポケット」にしている部分ですが、【BK947】はあえてメッシュにせず、高強度ナイロンでポケットを作っちゃってます。これには賛否両論あるでしょうが、みんなが同じであるくらい面白くないものはありません。高級感があって、いいじゃないの!

さらに裏返して背中に接する面を見ると、背中当たりを良くするパッドが「全面」ではなく、「両サイド」に装備され、背骨に沿って空間(ダクト)ができるように作られています。これによって背中から出る汗(水蒸気)が、このダクトを通って排出されるため、背中が汗でびっしょりになりにくい配慮がされています。

ストラップはやや細めで質素。薄型なので全体が重くならないため、必要十分であり、全体のシンプルなスマートさを損ねないしつらえです。さらにストラップの上部に付けられた手持ち用ハンドルがまた凝っています。外側には全体と同じナイロン素材で統一感があるのですが、指が触れる内側は、柔らかく優しい生地になっているんです。これ……ふと持ったときに嬉しい気持ちになります。じつに些細なことですが、使う人のことを考え、快適で優しいバッグ作りをしているなと感じ入ります。

そしてバッグ内部では、さらなる気遣いがあります。ビジネス用途ではパソコンを持ち歩く方が多く、PC用のポケットが背中側に装備されているんですが、そのポケットの下端が、バッグ下端に接しないように縫われています。つまり「浮いている」んですね。「それの何がいいってわけ?」という方がいるかもしれませんが、PCを持ち歩く人ならわかるはず。

普通のバッグは、ポケットの下端がバッグの底に直接に接するため、バッグを床に置いたとき、中のPCにダイレクトに衝撃が伝わります。筆者はPCポケットの底にクッション材やタオルを入れて衝撃対策していましたが、このようにポケットが浮いていれば、そんな心配をしなくていいのです。

もっとも頻繁に使うのが、ファスナーで開閉するトップフラップですが、上部もきれいに角型を保てる設計になっています。バッグに造詣の深い方ならば、使う人のことを考えて気を遣い、丁寧に、贅沢に作られていることがかならずわかります。テニス用バックパックとしてはちょっと高額な価格設定に思えるでしょうが、この仕様ならば、一般のカバン屋さんは「2万円で売れるんじゃないの」と言うでしょう。いやはや、プリンスはじつにマニアックです。

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。
試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー

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