Prince Monthly Column

2019/06/13

オーバーグリップの最大機能って知ってますか?
もっともお手軽なリフレッシュで、夏テニスを乗り切ろう!

カーボン製フレームとグリップテープは昭和の賜物
〜劇的に快適さを増したラケット環境〜

新年号『令和』となったことで、世間では「新しい時代の幕開け」と叫んでいますが、ことテニスに関しては、劇的な新時代到来に沸いたのは『昭和』でした。

新時代というからには、何かが大きく変わらなければなりません。いちばんに挙げられるのが「ラケットフレーム革命」です。今となってはご存知ない方がほとんどかもしれませんが、かつてラケットは木製でした。しかもフェイス面積は「約70平方インチ」と驚くほど小さい。いわゆる「レギュラーウッド」です。

テニス仲間での昔話にかならず登場する一節が「昔はよくあんなに小さくて飛ばないラケットでテニスしてたよな!」。たしかに今日の快適さからは想像できないでしょう。あの小さな面で、よく「トップスピンでグリグリだぁ!」とか気張ってたもんです。

それが金属製フレームが登場して以降、グラスファイバー、カーボンと、わずか10年くらいの間に、テニスラケットは完全な変貌を遂げました。そしてその直後、それまでのテニスを劇的に進化させた、ラケット界最大のイノベーション「プリンスのデカラケ」が誕生したのです。それ以降、幾多の進化が重ねられますが、現在も完全な形で生き残っているのはデカラケという世界だけですね。

いっぽうで、ラケット使用における文化的変貌が「グリップテープを巻く」という観念が生まれます。いまや「しきたり」のように習慣化してしまっていますが、これもまた、1980年前後に起こった昭和テニス変遷の一幕でした。

第二次大戦直後は、グリップテープどころか、フレームの木肌が剥き出しで、滑り止めのために縦溝が刻まれていましたが、天然皮革(いわゆるレザーグリップ)が巻かれるようになって、ずいぶん楽になります。しかし天然皮革グリップは、しだいに汗を吸って硬くなり、滑るようになるので、それにガーゼなどを巻いて滑り止めとする選手が現われます。

1980年頃には、滑り止めパウダー、粘着スプレーなども発売されますが、結局残ったのは、紙メッシュテープから不織布テープへと進化した、今日まで続く「グリップテープ」、別名「オーバーグリップ」なのです。

今日、店頭に並ぶテニスラケットのグリップには、天然レザーではなく「シンセティックグリップ」が巻かれています。もちろん、十分に汗を吸い、手のひらに吸い付き、クッション感もあるため、そのままでも十分にプレーできるのですが、ほとんどのプレーヤーが、その上にオーバーグリップを巻くのです。

機能的には、元グリで必要十分とわかっているんですが、やっぱり巻きたくなるんですよねぇ……。

ちゃんとわかって使ってる? グリップテープに搭載されている諸機能のこと
〜汗の吸収・滑り止め、でも忘れている最大の機能がある!〜

SUPER EXSPEED PLUS II

今、オーバーグリップを巻くあなたは、何を目的として巻いていますか?
単純に「滑らないように」という答が大半でしょうし、それでいいんですが、細かく見れば、オーバーグリップは複合的な機能で成立しています。

まずは「汗の吸収」機能です。手のひらに汗をかくことで、グリップが滑りやすくなるため、「滑り止め」機能と大きく関連しますが、オーバーグリップ側の機能としては、それぞれ違うものです。

かつての天然レザーグリップも、上質でしっとりしたものは、多くの汗を吸いましたが、すぐにいっぱいいっぱいになり、結局はベチャベチャになってしまいます。しかしオーバーグリップは、ベースに不織布を使うことで多くの汗を吸い上げて貯えることができます。もちろんそれは無制限ではありませんが、かなりプレーヤーの助けになってくれるものです。

それと関連して「滑り止め」は、手のひらの中でグリップが回らないようにする機能があり、これにはテープの表面処理が役立ってくれます。みなさんもご存じとは思いますが大きく分けて3つのタイプがあり、「ドライタイプ」「ウェットタイプ」「セミウェットタイプ」。どれがいいかは、プレーヤーの好みによって違います。

あとは耐久性だの、機能持続性だの、細々とした機能をピックアップできますが、みなさんはオーバーグリップにおける最大の機能を忘れているような気がします!
それは……「交換できる」「巻き替えることができる」という機能です。なにをいまさら……とおっしゃる方もいるでしょうが、オーバーグリップは「交換式」というのが最大のメリットです。

なぜ……って?
汗を吸う、手のひらに吸い付く機能には、限界があります。もしもそうなったとき、オーバーグリップならば、手軽に巻き替え、まったく新しい状態を再現することができるじゃないですか。しかもそのコストは、テニス道具の中で、おそらくもっとも安価なもの。オーバーグリップは、テニス道具でもっとも手軽に、使用環境をリフレッシュできる、きわめてスグレたアイテムなのです。

議論は尽きない…… ドライ派 or ウェット派? それともセミウェット派?
〜「タッキー」「タック」って、どういう意味?〜

SUPER TAC PRO

オーバーグリップには、一般的に「ドライ」「ウェット」「セミウェット」の3タイプがあります。どれを選ぶかはプレーヤーであるあなた自身ですが、それぞれの長所と短所を知ったうえで、自分にとってのベストを選ぶことが重要です。

ドライタイプは触った感じがサラサラしていて、新品の状態では爽やかな握り心地ですが、汗を吸い込んで一定量を超えるとオーバーフローとなり、手のひらにもかなり濡れた感じが残り、滑りやすくもなってしまいます。

ウェットタイプは、表面がツヤツヤしていて、握った感触がしっとり。ペトッと手のひらに吸い付くような印象が特徴です。オフセンターショットになってもグリップがズレにくいというメリットがあり、今日の主流となっているのが、このタイプ。テープの厚さにもバリエーションがあり、厚いほどクッション感があります。

そしてその中間タイプにセミウェットタイプがあって、表面にウェットタイプほどの光沢はないんですが、そこそこ手のひらにくっつく感触はあり、まさに中間的な感触。このタイプを好むのは、「ウェット感はほしいんだけど、頻繁にグリップチェンジをするので、くっつきすぎないほうがいい」というプレーヤーですが、ウェットタイプに押されて、選択肢は少なくなっています。

ところで、ウェットタイプを説明する語句に「タック」とか「タッキー」というのを見かけます。これにはいろんな意味がありますがグリップテープに使われる場合は「くっつく」という意味です。プリンスのオーバーグリップのラインナップは、すべてウェットタイプで「くっつき感」重視。

インパクト情報を少しでもダイレクトに把握したいプレーヤーが選ぶモデルが【SUPER TACK PRO】で、まさにタックという単語がそのままモデル名に取り入れられています。

【SUPER TACK PRO】はテープの厚さが「0.50mm」という薄さが特徴ですが、薄くても丈夫で伸縮性が高く、巻くときにシワになりにくいと評判で、性能バランスに優れているんです。ウェットタイプは「手のひらにピッタリ吸い付く感触」が大切なので、テープにシワが寄ってしまうと、せっかくの良さが半減してしまいます。ですが【SUPER TACK PRO】くらいの伸縮性があると、ちょっとくらい不器用な人でも、きれいに巻くことができます。

ただし! シワが寄らないようにと、あまりに強く引っ張って巻くのはいけません。ほんのちょっとの力加減で引っ張りながら、優しく巻いてあげましょう。あまりに強く引っ張るとテープが伸びすぎて、テープが機能するための厚さを保つことができません。握ったときにちょっとしたクッション感を感じるくらいでないと、汗を吸い上げる機能が低下してしまうのです。

このクッション感を重視したモデルが【EXSPEED II】で、テープ厚が「0.60mm」と、一般的にもっとも普及している握り心地です。プリンスでも、標準タイプとしてベストセラーを記録しているのがこれ! 初めて使われる方には、まずこれを使ってみてから、もっと薄いのがいいか、もっと厚いのがいいかを判断してください。

そしてさらに厚いのが「0.65mm」の【SUPER EXSPEED PLUS II】。スーパーでプラスですから、しっかりと厚さを感じさるロングライフスタイル。クッション感も強く、長持ちさせることを前提に設計されているため、「抗菌・防臭機能」も付加され、少しでも巻き替えを少なくしたい方には嬉しいスペックです。

グリップテープ交換は、グリップの洗濯だ!
〜どんなに着飾り、高級アクセサリーを着けても、グリップテープが!〜

しか〜し!
だからといって、いつまでも交換しないのではいけません。汗にはいろんな成分が入っていて、放っておくとバクテリアを繁殖させ、清潔とはいえないグリップ環境になってしまいます。

みなさんは、テニスをして汗を書いた後、脱いだシャツをかならず洗いますよね?
汗を拭ったタオルも、洗いますよね?
汗をたっぷり吸った後のオーバーグリップは、どうしていますか?
プレーのたびに巻き替える人など、さすがにいないでしょうが、ずぅっとそのままにしておくのはいかがなものかと思います。

テニスショップの張り替えラケットのラックを眺め、新しくきれいなオーバーグリップに巻き替えてからストリンガーに渡されたであろうラケットを見つけると清々しい気持ちになります。それとは逆に「いつから巻かれているんだろう……」と思わせるほど、ボロボロになったオーバーグリップが巻かれたままなのを見ると、ほんとに悲しくなります。

すっかり変色し、テープ厚は完全に潰れ、端がめくり上がってしまっているボロボロのテープは、本来の性能をほとんど発揮しません。クッション性は失われ、汗を吸うはずもなく、滑り防止にもなりません。

いずれかの性能に ??? を感じた時点で「お役御免」にしてあげましょうよ。
ウェアやタオルと同じように、オーバーグリップも洗濯してあげましょう。
オーバーグリップの洗濯とは「交換」「巻き替え」です。
「汚れてるな」と感じたときが「巻き替えどき」。

プリンスがラインナップするウェットタイプのオーバーグリップ。3つの厚さバリエーションから(他に個性的な2アイテムもありますが)、自分のスタイルにマッチするものを選んで巻き替え、爽やかな気分でプレーを楽しみましょう。

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。
試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー

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