あれこれ工夫を凝らした新作バッグ。これはまるで『コンバットベスト』だ。使い勝手重視なら、プリンスを選ぶしかない!

几帳面な性格のプレーヤーにピッタリのバックパックが出現
〜新作バックパックはコンパクト&整理整頓型〜

UR723 バックパック
プリンスのバッグ類には、10年以上前から注目していました。
なぜなら、明らかに「他所とは違うバッグを作ってやろう」という意思が製品に表われていたからです。

他メーカーのバッグ類が、デザイン重視ばっかりで、「テニスショップで目立てばいい」的な打ち出し方向だったのに対し、プリンスのバッグは「使い勝手の良さ」、「バッグにも個性を」の姿勢が明確に見えていたからです。

かつて『テニスジャーナル』でオリジナルバッグを企画したとき、プリンスバッグからアイディアを拝借させてもらった部分があります。オリジナルですから、そこは・・・なんですけど、どうしてもやりたかったことだったのです。それくらい心惹かれる部分をいくつも備えるのが「プリンスのテニスバッグ」だったわけです。春には、『バックパックL』を、テニス専門誌での連載ページで紹介させていただきました。一見、デカいバッグだなぁ〜と感じさせながら、これまでにない「大判・薄型」というコンセプトで、背負っていても周囲の邪魔にならない(まぁ自分的に気を遣わなくてもいいかなって)など、サイズ感に大きな魅力のあるバッグなので、現在も愛用中です。

さてさて、今回リリースされるバッグコレクションも、かなりの個性派揃い。
当たり前のバッグがありません(褒めてます!)。
まずメインに挙げられるのが『UR723バックバック』で、『バックパックL』よりも、やや小振りバージョン。

コンセプト的に踏襲しているのは「薄型・角型」。一目見て、真っ先に目がいったのは、トップの開口部が「角型ファスナー仕様」になっているところでした。トップ最上部に角型ファスナーを配置すると、開け閉めするときに「角」でファスナーがスタックしてしまう危険を感じていたのですが、実際には適度に丸みを帯びていて、そのような心配はない様子です。

さあ中を開けてみると、ありゃりゃ……ポケットだらけ。
大小合わせて「9個」ものポケットが配置されています。庫内背中側にはパソコンも入れられるクッション仕切り付きの大型ポケット。その外側にも中サイズポケット。庫内の反対側には、まるで「壁掛け収納ポケット」のように、パスやらメモやらペンやら、二重三重にポケットで埋められています。ついには、上部フラップの裏側にまでメッシュポケットだもの。
使える面は、ポケットで埋め尽くす! くらいの勢いです。
「これ全部を使うヤツ……いるぅ?」ってくらい、徹底したスペース活用システム。どこに何を入れたか、しっかり覚えていないと大騒ぎになりそうですが、几帳面で、整理整頓が趣味というプレーヤーは、涙を流しながら使ってくれることでしょう!
まぁ全部使わなくても、小物を多く持ち運ぶ方には「こちら、お値打ちの商品です!」

凝りに凝った工夫の数々。設計者の苦心が目に浮かぶ
〜快適性と利便性、不満が出ない対処に拍手〜

UR723 バックパック
こうしたポケット攻撃は、バッグ中身だけで終わりません。
まずラケットバッグとしてもっとも重要なラケット収納部。メイン収納部は背中側に配置されていて、普通のバッグと同じように見える……でしょうが、ここで一工夫。

ラケットを入れてグリップを中央から突き出し、左右のファスナーを両側から閉じるのですが、普通のバックパックでは「ファスナーが弛んで左右に開き、バッグが背中からベロ〜ンと離れてしまう」あられもない姿になります。
ところが【UR723】は、「ロックファスナー」なるものを搭載しており、ラケットを入れてもファスナーは重さで弛んで開かないので、これがあるのとないのとでは大違いなんです。
わずかな配慮に思えるかもしれませんが、使ってみると効果を感じ、その配慮が身に滲みます。
さらに、まだラケットを収納できる場所が、バッグの最外側部にあります。ここには薄型ポーチ的な収納スペースが設置されていて、ここと本体の間にラケットを挟み込めるようになっているのです。

それを支えるのは、このバッグで唯一、いかにもデザインっぽい仕様の大型バックル付きベルトが2本。これらが重なって、ラケットをホールドする構造なわけです。
しかし、どうして背中側にも、外側にもラケット収納部があるのか?(謎?)
その答えは、単に背中側に入れると、グリップが後頭部に当たってイヤだ! って言う人がいるからなんでしょう。とくにこのバッグは、背中の上のほうに背負(しょ)われるため、上を見上げるとグリップが後頭部にぶつかることもあるわけです。
そんなとき、背中からもっとも遠いところのラケット収納部が役立つのです。

もちろん、バッグ外部にもポケット攻撃の嵐。
トップの開口フラップの外側に1つ、開口部のすぐ下に1つ。さらに両脇にドリンクなどを入れられるメッシュポケットが1つずつ。片側にはL字型開口部の小型ポケットが1つ。
このバッグ、小振りボディなのに、なーんと「20箇所(ラケット収納部含む)」もの収納部が隠されているんです。
まるでコンバットベストみたいです!
メインにデッカいものは運ばないが、細かいものをたくさん運びたいという方に最適。
また、テニス用バッグとしてだけでなく、通勤・通学用にも使いたいという人には、まさにもってこいのアイテムです。
底面には4本のスタッドが打ってあり、ものすごく重いものを入れなければ、多少濡れた床に置いても、バッグ底面が濡れることはありません。
こうなると、ラケットバッグというより、「ラケットも収納できる多機能バックパック」というポジションのバッグですよ。

多機能を隠し持つのにラケバに見えない「ステルス仕様」
〜ワイドラケットバッグ & 2WAYボストンバッグ〜

UR724 2WAYボストンバッグ
このシリーズはブラックもグレーも、【prince】のロゴもクリアプリントで、非常に目立たない誂えです。最近では、こうした「目立たないロゴ」がちらほら出ていますが、ここまで徹底して「見せない」のは、プリンスがぶっちぎり!
機種名の『UR』は「アーバン」の意味で、「スポーツ感」を隠し、私服での日常移動に溶け込むデザインがトータルコンセプトなのです。

それがもっとも効いているアイテムが【UR721 ワイドラケットバッグ】
ワイドですけど、薄型です。ラケットが横置きにすっぽり入る、昔で言う「トーナメントバッグ・タイプ」で、ラケットの露出がなく、派手なロゴもないため,外見的にはまったく何のバッグかわかりません。ぱっと見は、「キーボードでも入っているのかな」という外見です。

とくにブラックは、ものすごくシンプルに見えますが、じつはいろんな仕掛けがされていて、まるで「忍者アイテム」のようなんです。
ラケットルームは「2本入り仕様」ですが、メインルームにもラケットを入れるなら、トータル6本は入るでしょう。ラケットルームとメインルームの間には、内側をフリース素材にした「パソコン・タブレット用ポケット」が隠され、14インチの薄型パソコンも収納できる仕掛けです。

このバッグにも隠しポケットが随所にあり、スムースな外装からは予想もつかない利便性が秘められているのです。
電車に乗るときに邪魔にならないよう、縦にして持てるハンドルを備え、縦に置いても底が汚れないように4本スタッドが配置されています。さらには、縦位置で背負えるようにと、ショルダーベルトが収納され、必要なときだけ引き出して使えるようになっています。

もう「微に入り、細に入り」の設計思想で、ここには書ききれないほどの徹底装備なんです。
もしも私が担当者ならば、この【UR721】には『NINJA』の愛称を与えるでしょう。航空機に喩えるなら『STEALTH』ですね。

そして最後に控えるのが【UR724 2WAYボストンバッグ】です。
開発担当者が「もっとも苦労したので愛着があります」と語るバッグは、テニス用バッグには珍しい、いわゆる「ドラムバッグ型」。
これは収納力が特徴で、メインルームの広さと、シューズ専用ルームが組み込まれているのも嬉しいです。

ボストンバッグらしいハンドルが装備されているので、手に持つのが普通ですが、ショルダーベルトも備えられているので、背負っての移動も可能です。ラケット収納は、メインルームに差してもいいですが、背負ったときに後頭部にグリップが当たるので、バッグサイドにもラケット用ポケットが設定されています。ボストンバッグorバックパックの変幻自在という、【UR】シリーズの個性派 2WAY仕様を航空機に見立てると、水平にも垂直にも飛行できる『VTOL』(垂直離着陸機)。
これらURシリーズをテニスショップで見かけたら、ぜひ手に取ってチェックしてみてください。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー