テニスに蘇る「上質なる気品」オンリーワン・ネオレトロの正体は ON/OFFいけちゃう本格派ゲームシューズ!

大人たちが待ち望んでいたハイパフォーマンスの上品スタイル
〜プリンスの大胆すぎる挑戦〜

CENTRE COURT AC/CG
プリンスが、またも大胆な提案をしてくれました。
近年ではほとんどすべてのテニスシューズは、派手めのカラーリングで覆われてしまい、テニスショップ店頭で「いかに目立つか」の競争になってしまっている気がします。
昔からのテニス友達と話すたび、「最近のテニスシューズは派手すぎて、俺たちベテランにはなんだかなぁ〜」という話題になります。

昔のテニスシューズは、白ベースのシンプルデザインで、どんなテニスウェアにも自然に合わせることができました。ブランドの主張も控えめなオシャレさで、昨今のようにデカいロゴマーク(あるいはライン)を搭載したものは少なかったのです。
ところが今では、白っぽいテニスシューズを探すのは困難であり、ブランドをまったく主張しない「純白モデル」などありえなかったのです。かつては大人のテニスシューズは白であり、カラーシューズは子供用という認識があったくらいです。

確かにテニスでは、元気な雰囲気に包まれたコスチュームが好まれますし、若々しい気分になることができますが、年齢を重ねるほどに、落ち着いたイメージを好むようになるもので、「やっぱりテニスは白だよなぁ!」という言葉が口から漏れるのです。

そんなベテランプレーヤーたちが、諦め顔で懐古的に語る純白のシューズが、プリンスから発売されました。
【セントレコート】のホワイトは、堂々たる「完全純白」で登場し、悲嘆にくれていたベテランたちに一筋の光条を落としたのです。(CGベース)
しかも1980年代を思い起こさせるレトロなカッティングで、上質感を演出しながら、シューズとしての機能は最先端技術を隠し持ったハイパフォーマンスモデル。
見かけはシンプルですが、その本性は・・・まさに「爪を隠した鷹」でした。

「白いシューズ=ローテク」の不文律を完全破壊!
〜ベテランの郷愁を誘う、高機能レトロ〜

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近年のテニスシーンに白いシューズが激減したのは、RPUという樹脂パーツで覆われたアッパーを採用するのが主流となったことが大きく関与しています。
この樹脂は「白は汚れやすく、黄ばみやすい」という弱点をもつため、白は敬遠されることになったわけです。
RPU時代以前も、白が多いシューズはたまに出現しましたが、それらはみな「ローコストモデル」で、熟練プレーヤーが使用するに足るだけの十分な機能を備えていませんでした。
むしろ「白いシューズは、安い靴」という悪い印象を与えることにもなり、当然、デザイン性も高いものではなかったのです。

そこに高機能を備えて登場した【セントレコート】は、テニス大全盛時代を想起させる「外羽根式」カッティングで、復古的超シンプルデザイン。
レースパターンもコンベンショナルで、靴紐をゆるめれば、履き口がとても大きく開いてくれるため、とても履きやすくなっています。
最近の高機能シューズは、まるでソックスを履くような感じのものが多いため、履くのに苦労することもありますが、【セントレコート】はスムーズな履き脱ぎが可能です。

こうしたデザインですから、オンコートだけでなく、オフコートでもまったく自然なスタイルで歩くことができるのが、とても大きな魅力です。
ただ注意してもらいたいのは、靴紐を緩めたままで履いて歩かず、かならずちゃんと締めてから歩くようにしてほしいです。
というのは、筆者自身がその経験をしたからです。
半日間、立っていなければならない状況だったため、「靴紐を締めないほうが楽かな」と思い、紐を結ばずに履いていたところ、足裏がものすごく疲れてしまったのです。
そこで紐をちゃんと締めて履いてみたところ、なんと、とっても楽になりました。
要するに、足とシューズの関係が正しいポジションになかったということでしょう。

近年の高機能シューズは、足を入れれば自然にベストポジションにセットされますが、この【セントレコート】は、履きやすいレトロスタイルのため、ちゃんと靴紐を締めることによって足が正しいポジションに置かれるシューズであることを知っておいてください。
そうすれば、【セントレコート】が、見かけによらない高機能を秘めた代物であることを理解できるでしょう。

長時間の快適テニスも支える適切なクッション
〜羊に見えても中身は狼。これはなかなかの本格派〜

CENTRE COURT AC/CG
さて、実際にプレー時のフィーリングですが、まず感じるのは、足入れ感がソフトなフィット感であることです。
ワイドをイメージしている方があったら、一度、ショップ店頭で足を入れてみてください。
外観はレトロっぽくても、中身は極めてプレーを意識した感じの仕上がりです。

第一歩の印象は、「アレッというほどの柔らかさを感じる」んですが、フワフワというイメージではなく、ソフトという程度の感覚。
ひとくちにソフトと言っても、その感覚には幅がありますが、【セントレコート】の場合は、足裏がフッと沈むのは「ほんの一瞬」で、柔らかさの底留まり感は浅めなんです。
ただし、踵エンド部の着地感は非常にマイルドで、沈み込みはちょっと深め……でも、衝撃を感じることなどなく、しっかり守ってくれている感触があります。
そして前足部ですが、グッと踏み付けると、ハイパフォーマンスシューズの安定性がいきなり表出するので、不安感はまるで感じません。

【セントレコート】は、外見的には「イージー」なオシャレなだけのローテクシューズかと思わせておきながら、じつは十分に戦力になってくれる、頼りがいのある武器でした。
まさに『羊の皮を被った狼』『爪を隠した鷹』です。
履いてみれば、「本体価格 ¥12,000」も十分に納得できますね。

ホワイトは最高級人工皮革、ネイビーはヌバック調のアッパーに価値あり
〜しなやかなフィット性能と伸びに強い耐久性を〜

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そしてしばらくの間、ほとんど見ることがなかった「全面人工皮革アッパー」ですが、人工皮革自体は進化を遂げていたのです。
かつての人工皮革というのは「柔らかければ、伸びが大きく」、逆に「伸びを抑えれば、硬くなってしまう」もので、どちらを選ぶかは、対象プレーヤーによって違いました。
激しく負荷のかかるフットワークには、硬くても伸びが少なくて、ホールド性能の高いものを、あまり強く踏み込まないプレーレベルのフットワークには、伸びをさほど心配しなくていいので柔らかいものが選ばれていました。

【セントレコート】は、ベテラン層を強く意識したモデルであるため、柔らかな履き心地も求められる……ということで、テニスシューズでは初めて使用される新素材『SLD SKIN』が使われたのです。
しなやかでありながら、しっかり形状を保つ強い剛性を持つ新しい人工皮革で、しかも伸びに強くて、軽量、さらには耐摩耗性も14%アップ(同社従来モデル比)という、高級な人工皮革なのです。

実際に手に取ってよく見ると、ホワイトは天然スムースレザーの光沢感としっとり感をたたえています。
喩えて言うなら「伸びない天然皮革」のような雰囲気で、機能的に進化した上質感を感じられます。

またネイビーは、皮革の表面を起毛させた「ヌバック調」が採用されました。
スムースレザーのホワイトとは全く異なったイメージで風合いも良く、よりオフコートでの使用を意識したモデルになっているところもスゴイと感心しました。
もちろん、オンコートで使用してもOKなのでウエアとのコーディネートを考えて合わせるってのもアリだと思います。
グラスサンド&クレー用はホワイトでハードやカーペット用にネイビーの2足持ちってのもアリかも・・・
と筆者は考えてしまいます。ぜひ、足入れだけでもお試しください。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー