Prince Monthly Column

2018/03/15

幅広らしい幅広対応モデル!
アッパー素材がTPUフィルム+メッシュの 【アドバンスドフィットゲーム10】は 同じ幅広対応の【ワイドライト】とは こんなところが違っている。

大流行のRPUアッパーのメリットは絶大……だが
〜想定ユーザーに最適化するための素材選び〜

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ここ数年、テニスシューズは「どれも同じように見える」という印象が続いてきました。それは、どのシューズもRPU(ラバーポリウレタン)という樹脂素材によってアッパーが覆われているからです。なぜそうなったかには、2つの理由があります。

まず、RPUは伸縮しにくい素材で、強く踏み込んでもアッパーが伸びることなく、横ブレしにくい利点があります。ただしこれは単体でアッパーに使えるわけではありません。おもに軽量なナイロンメッシュを基布として、それを補強するように覆う形で組み合わせて使われるのです。この強靭なアッパーを構築できるというメリットは、とくにシューズへの負担の大きい「競技系モデル」に役立ちます。

そしてもう一つのメリットは、製造上の利便性にあります。従来の人工皮革製のアッパーは、使用素材の伸びが少ないために、立体的に成型するには、どうしてもいくつかに切り分けられた素材を縫い合わせる必要があるのです。それは完全に手作業で行なわれるため、時間と労力が必要となり、製造コストにも反映してしまいます。

ところがメッシュ+RPUでアッパーを作るには、大きな1枚の甲被をラスト(足型)の前足部に被せて吊り込んで加熱することで、ラストどおりに成型できるので、縫製という作業を簡略化でき、仕上がりの安定性を向上させることができるのです。みなさんがいま履いているシューズの前足部を確認してみてください。ほとんど縫い目がないはずです。

このようにメッシュ+RPUアッパーには大きなメリットがあるため、それを採用するシューズだらけになりましたが、すべてのシューズがそれでいいわけではないのです。伸びが少ないアッパーは、逆に考えれば余裕が少ないとも言えるので、たとえば足幅が広いプレーヤーには窮屈に感じられることもあります。

そこでふたたび注目を集めているのが「メッシュ」などのニット素材です。軽くて通気性が高く、伸縮性も備えている素材ですから「快適」という点ではベストです。しかし、横に強く踏み込むことなどがないランニングシューズなどにはそれでいいのですが、テニスの場合は、メッシュだけでは横への動きに対するサポート性が十分ではありません。

そこで開発されたのが「TPUフィルム+メッシュ」。TPUというのは「熱可塑性ポリウレタン」のことで、高い強度と弾性を備えた樹脂であり、これをフィルム状にしてメッシュに貼り付けることで、メッシュの軽さを活かしたまま、適度な伸縮性を備えた強化を図ることができるのです。これを取り入れたのが、ちょっとワイドな足を持つクラブプレーヤー向けの【アドバンスドフィットゲーム10】なのです。

長時間、週末のクラブで過ごすプレーヤーに快適なシューズを
〜目立たないけど安定性能への配慮があちこちに〜

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競技のための練習をするプレーヤーは、多少は窮屈に感じても足元をガッチリ固めるために、タイト系のシューズを選びます。練習は集中して短時間に行なわれることが多く、練習が終わればシューズを脱ぎ、足をリラックスさせます。長時間に渡って履き続けることは、足に負担をかけるからです。

平昌オリンピックのスピードスケート競技でも見たと思いますが、選手はレースの直前にシューズを履きます。コーナーワークで足にかかる猛烈な荷重に耐えるため、スケート靴を足と完全に一体化するくらい強く締め付ける必要があるからです。テニスではそれほどではないにしても、ハイレベルな競技者のシューズはいわば戦闘用であり、たとえかなり窮屈でも、その時間だけ最高の性能を発揮することが求められます。

しかし、週末のテニスコートでは、多くの方が一日中、同じテニスシューズを履いていますよね。そんなプレーヤーには、競技系のタイトなシューズはあまりにツラいです。もちろんコートを出るたびにサンダルなどに履き替えればいいわけですが、そういう方はごくわずかでしょう。

そうしたときにほしいのが快適性の高いシューズです。いわゆる「楽なシューズ」。しかもワイドな足をお持ちの方は、幅広設計だけでなく、伸縮性があり、軽いフットワークでも足にフィットして屈曲してくれる柔軟性のあるアッパーを求めます。それに適しているのが「TPUフィルム+メッシュ」アッパーなのです。

もちろん「ただ楽なだけ」では、足の安全を十分に確保するのはむずかしくなります。そこで【アドバンスドフィットゲーム10】では、「TPUフィルム+メッシュ」に加えて、踵から中足部の両サイドに、厚めの人工皮革に立体的に加工して強度を高めた「プレスパネル」を配することで、下から足を巻き上げるようなホールド感を向上させ、たとえ強く踏み込んだ場合でも安心できる安定性を持たせたのです。

「楽だけど、安心・安全」、それが【アドバンスドフィットゲーム10】ですね。

ワイドらしいワイドに、安心感を持たれるプレーヤーへ
〜【ワイドライト】とは一味違うワイドコンセプト〜

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となると、プリンスシューズで同じワイド対応の【ワイドライト】とどちらを選んだらいいか? ということになりますよね。【ワイドライト】は¥13,500と価格的に¥4,000も高価です。いったいどこが違うのでしょうか?

まずテニスショップで足を入れて、履き比べてみてください。【ワイドライト】は前足部をRPUでカバーしてあるため、立体的な剛性感が高いです。幅広設計といっても、見た目にはワイドっぽくなく、ワイドな足には「高さの余裕」が「幅の余裕」に変容して対応してくれます。じつは幅広足なんだけど、できるだけワイドには見せたくないという女性などにはとても人気が高いですね。

また【ワイドライト】には「セミボードラスティング」という、前足部のアッパー全辺を下側に巻き込むという、非常に贅沢な構造を採用しています。そのおかげで、前足部を包み込んでくれるような感触が生まれるのです。

かたや【アドバンスドフィットゲーム10】は、履いた感じもしっかりと前足部に余裕があって、幅広足の方にも窮屈さはなく、「TPUフィルム+メッシュ」の伸縮性と柔軟性も快適さを助けてくれます。それに対して踵周りの後足部は、包み込むようにしっかりとしたホールド感があるため、不安感はないのです。

さらに【ワイドライト】との一目瞭然の違いが、「ダブルHソール」と名付けられたアウターソールです。【ワイドライト】のアウターソールは、前足部と後足部が分割され、それをつなぐ「ダブルシャンク」が露出していますが、【アドバンスドフィットゲーム10】のアウターソールは、足裏全面がサーフェスに接触する構造です。

その理由は、使用想定プレーヤーの違いにあると思います。全面の「ダブルHソール」は、サーフェスをつかむ溝やスタッドが多く、それだけグリップ力も高くなり、ゆっくりめのフットワークでの安定性能が高くなります。

「競技者向けほどグリップ性能は高いはず」と思い込んでいる方が少なくないでしょうが、じつはまるで逆なのです。自分の踏み付け力でサーフェスをガッチリつかめる競技者にとって、止まりすぎるのはちょっと困ります。対して、踏み込む力が小さいプレーヤーほど、シューズ側がグリップ性能をサポートしてあげる必要があるのです。ここは、よく覚えておいてくださいね。

まとめると、同じワイド対応と謳いながらも、【ワイドライト】は競技性が高いプレーヤーに適性が高く、【アドバンスドフィットゲーム10】は日常でテニスを楽しむプレーヤーに向いていると言うことができます。

プリンステニスシューズのラインナップは、競技性が高い順に【ツアープロZ III】→【ツアープロライト III】→【ワイドライト】→【アドバンスドフィットゲーム10】と、非常にわかりやすい構成になっています。きっとあなたのベストシューズ選びに役立つことと思いますよ。

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。
試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー

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