どうしても育ちの良さは隠せないグラファイト一族だが、新テク・フル装備でやんちゃな三女【プリグラ97】に激打ちたちが群がる!

【ファントムグラファイト】一族の三姉妹がそろい踏み
〜 二人の姉とはかなり違う「異色の三女」 〜

PHANTOM GRAPHITE 97

このタイトル……なに言ってんだかわっかんねぇよ! とおっしゃる方こそ、さぁてお立ち会い! 昨年は元祖グラファイト公爵の孫娘とも言える【ファントムグラファイト】令嬢二姉妹が登場。長女は「気が利いてなんでもできる107」、次女は「気ままだけど、愛想が良くて誰とでも仲良くなれる100」。長女と次女は姿形もよく似ていて、いっしょにいても「姉妹よね」ってすぐわかります。

しかしこの春、グラファイト姉妹の三女が社交界デビュー。間違いなく二人の妹なんだけど、「三女97」は見た目も強気で少し派手……。次女とのギャップは「わずか3inch2なのに性格はずいぶん違い、ちょっと気性が激しくて、体当たりでガンガンいっちゃう末っ娘タイプ」。

【ファントムグラファイト】令嬢二姉妹登場に、昔からグラファイト家のお世話になっているみなさまは、「あの公爵の血筋が現代的になって甦られた!」と賞讃しましたが、今回は「本当にあのお血筋ですか?」とビックリされた方が多いはず。

まずは外見的に「マット塗装(艶なし)」→「グロス塗装(艶あり)」となり、まるで雰囲気が違います。全身、ほぼ黒づくめですが、じつはグロス塗装の下に【ファントムグラファイト】一族の証となるラインがシックに潜んでいます。まるで「いちおう一族だけど、アタシはアタシ!」と嘯いているようです。

姉たちが「芯は強いけど優しそう」な装いなのに対して、「三女97」は見るからに「強気」な出で立ち。タイトなエナメルのジャンプスーツって感じでして、そんな装いは、そのまま気性を映す鏡です。

「やんちゃ」「暴れん坊」「じゃじゃ馬」……それが【ファントムグラファイト97】の印象であり、そのままの個性が仕込まれて生まれた黒いヤツ。その輝きは、テニスショップの壁に並ぶラケット群の中にあって、ひときわ光を放つでしょう。

このラケットは「激打ち(ハゲウチ)」プレーヤーがターゲット!
〜 「激打ち」って何だ? 〜

このところ、プリンスラケットが広く愛され、確実に愛用者が増えていることを感じます。楽にも激しくもプレーさせてくれる【ビースト】というラインナップの魅力。バックハンドが苦手でテニスが楽しくない……というプレーヤーのために開発され、その恩恵が競技系プレーヤーにも及ぶことが知られ、どんどん世界が広がっているプリンス【X】。

さらには、いかにもプリンスらしい競技系で、世界に先駆け「純白」デビューした【ツアー】シリーズ。あらゆるプレーヤーたちから「最近のプリンスって面白いし、かなり使えるよね!」と話を聞きます。

ただ、男子プロが武器にできるくらいに本物の競技用が、ブランドにはかならず必要だ……という魂を、プリンスは忘れていません。その魂が作らせたものこそ【ファントムグラファイト97】なのです。

バッコバコ打ちたい! というプレーヤーにとっては、100 inch2の【ツアー】シリーズは飛んでくれちゃいすぎ。彼らが使いたいラケットを、どこにラインナップしたらいいか?
プリンスの歴史を築いてきたのは【グラファイト】であり、その血脈は今もなお生きている……だから強烈に強い【ファントムグラファイト97】に注ぎ込まれたのでしょう。

プリンス開発担当の相馬安紀氏へのインタビューの中で「激打ち(ハゲウチ)」という言葉が出てきました。恥ずかしながら筆者は初めて耳にした言葉です。「なんすか、それ?」
相馬氏は「若いハードヒッターたちの間では『激しく打つ』を『激打』→『ハゲウチ』って言うんですよ」って。

「えっ、そうなん?」……『ハゲウチ』と聞いて、熟年のオッサンが必死に頑張って打っている姿を想像してしまうのは、きっと筆者だけではないでしょう。つい先日、日本期待の星と囁かれるプレーヤーのお父さんと話していて『バコラー』という単語が飛び出しましたが、すぐに想像できました。「バコバコ打つ」「激しくバコるプレーヤー」の略だろうと直感的にわかりましたが、『激打ち』って(笑)。

でも、そう言うんだそうです!
みなさん、覚えてください。『激打ち』とは、「長年グラファイトを愛用するハゲが打つ」のではなく、「激しく打つ」意味なのです。

次は、どこがどう『激打ち用』なのか、徹底的に見ていきましょう。

特別に誂えられた「軽快・微厚・糸列・直糸・黒艶」スペック
〜 速さにパワー …… そして強さ 〜

GRAPHITEロゴ

この【ファントムグラファイト97】を持った瞬間に、ほとんどのプレーヤーが言うのは「ほんとに315gあるんですか?」
あるんです。【107】は「305g」、【100】は「310g」、【97】は「315g」と、段階的に重くなっているのに、スウィング感覚は「軽い」と感じるのです。スウィングウェイトは「290」、静止バランスを「305mm」に整えられています。スウィングウェイトだけを見れば【107】と【97】が「290」で、【100】だけが「285」とやや軽めの設定ですが、先入観も含んでの感覚では、【97】の軽さに驚きます。その軽さのおかげで、個人の好みとパフォーマンスに応じて、レッドテープなどによる加重を用い、ベストバランスに仕上げることも可能です。

これらをトータルに見て、ひと言で表現するならば、「ドライブの【107】」、「振り切る【100】」、そして「ぶっ叩く【97】」という感じです。フェイス面積が97になると、いきなり「飛ばない感」が増しますが、それをスウィングスピードでカバー。その分、打感のダイレクト感が増し、コントロール性の高さを感じるようになります。

ただ、「小さく・振りやすく」しただけでは、フレームの頼りなさを感じるようになるため、【107】【100】では「21.5—20.0—17.5 mm」の『CTS』(コンスタントテーパーシステム)ですが、【97】では「22.5—21.5—18.5 mm」と、全体的に「1mm厚」にして、剛性アップを図っています。

ちなみに『CTS』とは、フレームの先端へ向かって徐々に厚くなっている形状で、フレーム先側でのパワーアシストに貢献するシステム。「先側で打つ」は、現代競技テニスにおける主流の打法ですが、プリンスではこれに対応するシステムを30年以上前に完成させていたことに驚かされます。

フレームトップ側の「2時・10時」の位置に、「テキストリーム×トワロン」を配置することで、この部分の剛性を増しています(ATS:アンチトルクシステム)。ここを強化することで面の揺らぎを減少させ、パワーロスの逃げ口をなくします。これによりパワーレスポンスの向上と、面安定によるコントロール性向上を実現するのです。

ATS

そして注目すべきは「ストリングパターン」。【107】は「16×19」、面が小さくなった【100】では、飛びをカバーするために横糸を1本減らした「16×18」。となればもっと小さい【97】も同じ「16×18」かと思いきや、「16×19」と1本増えて、ボールをグシャッと潰せるようにという意図で設計されました。

「面サイズ:小」「ストリングパターン:密」となれば、理論的にグッと反発パワーが落ちるはずですが、フレーム内部に秘密のシステム「パラレルホール」が仕込まれています。通常のストリングホールというのは、フレームの外側から面の中心に向かって孔が開けられます。その場合、ストリングの実効域は「フレームの内側グロメット筒を出たところから」となります。

ところが「パラレルホール」では、縦糸・横糸 合わせて全体の84%の糸が、フレームの外側から「ストレート」に貫かれるため、ストリングの伸縮機能(反発パワーの源)は見かけの97 inch2よりもはるかに増幅されているのです。そのおかげで「面の小ささ」「ストリングパターン密度の高さ」によるパワー的なリスクは回避されているわけです。

そして仕上げに「黒艶」ですね。【ファントムグラファイト107】【ファントムグラファイト100】は、歴代【グラファイト】のイメージを一新するために、艶消し塗装が施されたのだと思いますが、【ファントムグラファイト97】では艶あり……しかも通常よりギラつくくらいに輝いています。

このイメージは、やはり「強さ」でしょう。ご存知の方も多いかと思いますが、よく国際トーナメントなどで「市販モデルは艶なし塗装なのに、選手が使っているのは艶あり塗装」という例が、けっこうな数ありますね。メーカー側には「市販のものとは仕様が違うのよ」というアピールが含まれているのかもしれませんが、多くは「選手側のリクエスト」だと聞きます。

つまり「プロは艶ありが好き」→「艶ありのほうが強く見える」というイメージがありますし、たしかに艶ありのほうが精悍に見えますよね。しかも「ブラックボディにゴールドロゴ」が輝いて見え、グリップにはプリンス自慢のハイブリッドグリップ【RESI TEX TOUR】がデフォルト搭載され、これにもゴールドロゴが与えられて、さらに精悍さを高めます。

まずは「試打」してみてください。プリンスには「デモレンタルプログラム」というシステムがあります。各シリーズのセットをプリンスWEBから注文すると、有料ながら(とはいっても送料相当ですよ)プリンスから直接に試打ラケセットが届きます。【97】発売後には、【ファントムシリーズ】セットに加えられるでしょうから、他の【ファントムシリーズ】との打ち較べを満喫できます。試していただけば、ここで言っていることをご理解いただけると思います。

ちなみにこのコラムの初段で「どうして【グラファイト】が『公爵』なのか?」と疑問に思った方がいたならば、ひさしぶりに和英辞書を開いてごらんください。その意味がわかるはずです(要確認)!

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー