「らしさ」が戻ったワイドライト!  あなたは「超進化型」と「らしさ型」のどちらを選ぶか !?

おぉっ! 純白のインパクト。プリンスに「白」の流れ
〜 テニスの原点「カラーホワイト」〜

WIDE LITE 2020

今、あらゆることに我慢しなければならない状況に、多くの人がストレスを感じています。先の見えないトンネルの中を歩き続けなければならない不安と、弾けるような楽しさを感じきれない毎日……、わたしたちは「光」と「明るさ」を求めてしまいます。

「だから白なのかぁ!」
prince 2020 Summerに発表された新製品の多くに「純白」が取り入れられています。
最新作ラケットの【TOUR】シリーズは完全な純白主義。【EMBLEM】【Prince X】シリーズにもホワイトベースモデルが登場。シューズでは、先行の【WIDE LITE ADVANCE】、【TOUR PRO LITE VI】に純白イメージがあります。

そして【WIDE LITE VI】は、踵側に黒があしらわれてはいますが、なぜか「純白」のイメージを強く感じさせます。アッパーのメイン素材である「RPU」が、純白の印象を強く感じさせるのでしょうか。子供時代、買ってもらったばかりの消しゴムに、輝くような白を感じたのと共通する気がします。

そこでプリンスシューズの開発者に、今回の「純白」について訊いてみました。
「今期のプリンスは、ラケットを中心にホワイトカラーを強く押し出し、純白をテーマカラーにしています。今年は『プリンス50th』という節目の年であり、テニスの原点『カラーホワイト』を打ち出しているのです」。

ということで、筆者が勝手に思い描いた「光」「明るさ」とはちょっと違ったのですが、『カラーホワイト』推しは、そのとおりでした。現代の若者には「テニスは白? ナニソレ?」って言われるかもしれませんが、昔から『テニスは白』でした。約140年前に誕生した「現代テニス」発祥の頃、男性はタキシード、女性はバッスルドレスという完全盛装だったのが、その後「遊戯→競技」の側面が現われ、活動しやすい白いシャツに白いズボン/ロングスカートに変わってゆきます。もちろんテニスボールも『白』。今日でもウィンブルドンは純白主義を貫き(一時期よりさらに厳しく)、いまや白以外は、ブランドロゴと細いラインくらいしか許されません。

テニス道具のすべてがカラー化されたことで楽しくなったにはなったのですが、他の色とのバランスを考えなければならないという悩みもあります。でも白は、どんな色と組み合わせても違和感はありません……どころか、目立っちゃいます。【WIDE LITE VI】の「消しゴムホワイト」、いい感じです!

「良い商品をできるだけ多くの方にご使用いただきたい」……
〜 【ワイドライト】らしい性能・価格バランス 〜

今回の【ワイドライト VI】発表に当たり、多くの人を驚かせたのが「思い切った価格改定」です。前作が「¥14,850(税込)」だったのが「¥12,320(税込)」と、なんと約¥2,500ダウン。どーゆーわけ?
ということで、ふたたびプリンスシューズ開発者に改定理由の説明を迫りました。

「良い商品を1人でも多くの方にお渡ししたい! との思いで価格変更を決定した……というのが本音です。いくらいい商品を並べても、購入・使用していただけなければお客様の元には届きません。そこで、このモデルのターゲットユーザーへ、価格に対する意識調査を行ない、また過去のデータを精査し直した結果、【ワイドライト VI】のお客様が求めている価格を算出しました」

では、もともと安いものを高く売っていたのか? と勘ぐってしまいますが、安くなる理由はしっかりあり、価格的にも計算が合うものだったのです。
「これまでの【ワイドライト III】は、インナーソールに大きな特徴がありました。これはかなりの気合いを入れて開発したもので、プレーヤーのパフォーマンスアップに大きく貢献すると信じて投入した技術であり、そのために価格が大幅にアップしてしまったという経緯があります」。

なるほど……さらに続きます……
「ただ特徴的であるがゆえに、(お客様にとって合っているか、いないかは別にして)気に入っていただける方とそうでない方がいました。今回は、幅広モデルを求める方へ、快適性の追求の延長からクセのないインナーソールに変更しています。素材配置・硬度設定は、柔らかさを重視して【ワイドライト VI】のために作り直しました。その分、ミッドソールは工場と協力しプリンス独自の配合で、衝撃緩和性と反発性を兼ね備えたSoft & High Rebound Mid Soleを開発し、軽いフットワークでも足元をしっかりサポートしつつ柔らかな足入れ感を実現しました」。

でも……?

WIDE LITE 2020 Tech Image

劇的な進化を遂げた【ワイドライト】、あの感覚の愛用者もサポート
〜 開発者の思いが詰め込まれたインナーソール 〜

Arch Supporter 3.0

【ワイドライト】【ワイドライト II】を気に入って愛用してきたファンには、【ワイドライト III】(赤いヤツ)に足を入れた瞬間に「アカンッ!」と感じ、購入を諦めた方もいたでしょう。それくらい「Arch Supporter 2.0」投入はインパクトのある変化でした。しかしながら逆に「これ、気に入ちゃったもんねぇ〜!」という方もいらっしゃったはず。

さらに開発者に迫ったところ、安心できる答が返ってきました。
「プリンスとして、インナーソールはとても重要なものであるという考えを捨てたわけではなく、むしろアップデートして「Arch Supporter 3.0」とし、別売オプション ¥3,000で販売します。バージョンアップのポイントは3つあります。
1.上層部の素材をTPEから低反発素材に変更し、衝撃緩和性アップ!
2.「2.0」よりもアーチの突き上げを少なくし、踵から中足部にかけての傾きを変更。
  3点アーチ(内側・外側縦アーチ、横アーチ)サポート構造で疲れにくい!
3.踵骨の最下点を後方へ移動して、より深いヒールカップで包み込むフィット感!
このセッティングは、楽チンユーザーだけでなく、競技志向プレーヤーに対しても十分に機能します。プリンスは、お客様に対する責任を重視するブランドであり、一度提供したものを簡単に破棄せず、なんらかの形で届け続けたいと考えています」

熱いんです! 筆者はいろんなテニスシューズ担当者・開発者を知っていますが、プリンスのこの人……シューズ作りに賭ける情熱は半端じゃないです。

いったん出した手を引っ込めるだけでは芸がありません。インナーソールというのは、ただでも目には見えにくいのに、「Arch Supporter 2.0」→「Arch Supporter 3.0」にはかなりの精力が注ぎ込まれています。普通はそこまでしませんし、シューズメーカーは無難なインナーソールを入れて、「替えたい場合はインナーソール専門メーカーのを買えばぁ」って感じですが、プリンスのこうした開発努力は、今後さらなる発展のステップとして積み重ねられていくはずです。

最後にひと言、言い忘れていました。「白って汚れやすいから……」と言う人がかならずいますが、テニスシューズって汚れるものですよ。黄ばんじゃうほど長く履き続けるものでもありません。白がイヤならば【ワイドライト VI】には 「ネイビー×マゼンタ」という選択肢もあります。ボール、ストリング、シューズ……テニスは消耗品の集まりですが、良いテニスをしたいと思うなら、性能寿命に応じてリフレッシュしていくのがいいですね。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー