Prince Monthly Column

2018/12/13

1978年のデカラケデビューから40年。
現代のデカラケ【EMBLEM 110】は、 誕生の原点に戻って、楽しく、速い、コントロールモデル!

テニスをみんなのものにしたプリンスラケットの大偉業
〜デカラケは’80年代から今日まで「パワーラケット」の象徴〜

Princeヒストリー

このコラムでは、何度か「プリンスの原点 デカラケ」について話してきました。その登場直前まで「70平方インチの木製ラケット」を使う硬式テニスは、ある程度打ち合えるようになるまで、けっこうな時間を要したものです。グリップはハンマーを握るように……、スウィングはグリップとラケットを一塊にして前へ押し出すように……。ボールはなかなか気持ちよく飛んでくれません。

それを「誰でも楽しめるスポーツ」にしてくれたのがプリンスのデカラケだったのです。修行みたいな熟達年数はいらないし、そんなに力がないプレーヤーでもラリーを楽しむことができるようにしたのです。また、そのハイパワーとスピン性能は、競技者にとっても武器となり、世界のテニスシーンを大きく書き換えましたね。デカラケこそ、テニスラケットにおける最大のイノベーションと断言していいと思います。

でも当初から抵抗勢力はたくさんありました。「テニスは基本からキチッと覚えるものだ!」「あんな大団扇みたいなものを大人が使えるかよ!」「下手だと思われるだろ!」さまざまな揶揄を浴びせられましたが、従来の「1.5倍」のフェイス面積は、あらゆるメリットをプレーヤーにもたらし、結局、従来の「レギュラーサイズ」は完全に消え去ったし、今日の主流になっているラケットは「100平方インチ前後」もあるじゃないですか。

みんな、デカラケのハイパワーを認めざるを得ず、転がり始めた巨石を止めることができないかのように、40年間、「ハイパワー」が求められてきたのです。そのおかげで、テニスを楽しむことができる歳月が長くなりました。かつては60歳以上でテニスをしているなんて聞くと「いやぁ〜、ずいぶんとお元気ですなぁ」なんて会話が日だまりのコートサイドで交わされていましたが、いまや50代はバリバリの現役。60代だって平気でガンガン打ってます。うっかり「元気でいいですねぇ〜」なんて声をかけたら、睨まれますよ。

いまどきシニアって言ってもいいのは「70歳以上」じゃないか? ってくらい、テニス寿命が延びてます。その歳になってもテニスを楽しめるのは、間違いなく「ハイパワーラケット」のおかげ。ラケットにハイパワーを生み出すための技術が切り拓かれ、時代によっては「高機能モデル」としてハイエンドスペックを搭載してきたのです。シニアが楽しくテニスを続けるために、欠くべからざるものとなったハイパワーラケット群は、テニスラケットが進化するための実験場とも言えたのではないでしょうか。

振り返ってみれば、ハイパワーモデルはつねに「デカかった」。もちろん今もデカいのですが、全体的に大きくなってるから、そんなに目立たないですよね。でも、デカラケはプリンスが「家元」「宗家」「本家」であり、今日でもその見事な「ワザ」を見せてくれています。

プリンスのパワーモデルが研ぎ澄まされた結論……【エンブレム】
〜デカラケ、厚ラケ、長ラケ、O3、そしてスマートに〜

そんなデカラケのもっとも進化した姿が【エンブレム】シリーズ。ここに辿り着くまでプリンスは、非常にたくさんのハイパワーモデルを世に送り出してきました。デカラケの次にハイパワー・イノベーションとなったのは「厚ラケ」でした。プリンスの最初の厚ラケは【CTSアプローチ110】。最大厚が28mmだったから中厚クラスかな。フワフワしたクッショングリップも話題になりましたね。

翌年には本格的厚ラケ【CTSサンダースティック110】が登場。これはトップ部の最大厚が36mmという逆テーパー形状で、正面厚が薄く、インパクトでの面内たわみのおかげで、パワー増加とホールド性を併せ持ったモデルでした。90年代中頃にはきわめて個性の強い【エクステンダーサンダー880 PL】というのもありましたね。エクステンダーというのは、縦長・逆卵形の巨大フェイスで122平方インチもあったのです。この頃から【サンダー】というニックネームが使われ、続いて長ラケ時代に突入して【サンダー970 LB】と、ますますパワーレベルが上がっていきます(パワーレベルという言葉については機会を改め別稿で)。

2000年代になると、プリンスは「トリプルスレット」というテクノロジーを打ち出します。これは比重の重いタングステン素材折り込みによる、面の安定性と先重パワーを同時に実現させた重量配分システムのこと。この時代には【トリプルスレットグランデタングステン スーパーオーバーサイズ】【トリプルスレットRIP】というモデルが登場。とくに長—い名前の前者は「最大28mm厚&28インチロング&130平方インチ」という巨大サイズ。今でもあのデカさは忘れません。

また【トリプルスレットRIP】も愛好者が多く、エクステンダースタイルのフェイス形状の28mm厚&27.5インチロング。打球感の柔らかさが特徴で、ベテランプレーヤーに好まれていました。この頃のプリンスは超々軽量モデル開発に気合いを見せ、【グランデタングステン スーパーオーバーサイズ】が245g、【RIP(リップ)】が240gと、シニアの非力さでも十分に操作性の高いラケット開発に注力していたように思います。これだけ軽くて「打感が柔らかい」と評価される【RIP】はたいしたものだったのです。

さて、みなさんの記憶にまだ新しい【O3】が登場するのは2005年ですが、その前に【O3】の前身となる【MORE(モア)】があります。2つのフレームを張り合わせて構築することでグロメットが必要ない特殊な構造を持ち、ものすごい剛性を叩き出しました。その時代のパワーモデルが【MOREパワー1500S】で、これも255gの超々軽量設計。この「1500」はおそらくパワーレベルでしょうから、マジでスゴいです。

そして【O3】ですが、ここでベテラン用モデルは「シルバー」の路線が完成します。なんだか「そのまんま」ですけど(笑)。やはり超々軽量の240gで、最大フレーム厚は30mmの【O3 シルバーOS】。もうね、スウィングなんかいらないの。ラケットを差し出して、当てるだけでブッ飛んでいきそうですよね。でも、ベテランやシニアプレーヤーには必要なんです! こういうラケットが。

さて、今日のラケット群を見回してみても、こんなはっきりしたハイパワーモデルって、あまりないですよね。ベテランプレーヤーはラケットを大切に使うから、買い替え需要が少なく、この分野から撤退するメーカーが多いんです。でもね、プリンスには【エンブレム】という明確なパワーシリーズがあります。プリンスはだから愛されるわけ……必要とされるわけ!

今、もっとも要求された形が 新【エンブレム110】となった
〜「優しい」「速い」「大きく」「力持ち」〜

エンブレム110

これまでの【エンブレム】は2機種構成。フェイス面積が120平方インチで、トップ部の最大厚が30mmの最高パワーモデル【エンブレム120】と、107平方インチ、275g設定の【エンブレム107 XR】です。ともにハイパワーモデルでありながら、フレーム断面は「ボックス形状」であるのが特徴です。

【エンブレム120】はすでに『トワロン』を搭載済みで、最新スペックになっています。このラケットを必要とされるのはシニアプレーヤーか、とっても非力な女性プレーヤーでしょう。フェイス面積120平方インチというビッグサイズに加え、フレーム重量が「244g」と超々軽量で、フレーム長が「27.25 inch」で約1cm長いスペックで、最大厚30mm、プリンス最高クラスのパワーレベル「1500」をマークします。パワー不足に悩まれているプレーヤーにとって、これほど心強い味方はありません!

一方の【エンブレム107 XR】は、『トワロン』未搭載ですが、275gという重量設定からもわかるとおり、「オレはもう少し元気だぞ!」というプレーヤーのための107平方インチです。パワーレベルは「1250」と大きいのですが、【ビーストO3 104】が「1100」なので、とてつもなく飛んでしまうというほどではありません。「本格スタイルのテニスを続けてきて、ボックス形状が好きなんだけど、もっとパワーを!」というプレーヤーに薦めたいラケットです。また軽量トップライト設計であるため、ダブルスでの速い対応がしやすいモデルであることもチェックしておいてください。

そして最後に、最新の【エンブレム】を紹介します。トワロンを新装備して登場した【エンブレム 110】です。「トワロン」というのはアラミド系繊維で、これをプリンス自慢の「テキストリームカーボン」に組み合わせることにより、インパクト時のホールド感が高いのに、打球の飛び出しが速く、軽量なのに不快な振動を低減してくれるというメリットを生み出してくれます。「110平方インチ」というサイズを「デカい……」なんて感じるプレーヤーはもはやいません。

この【エンブレム110】で注目してほしいのは、26〜28〜26mmという中厚クラスのフレーム厚でありながら、パワーレベル「1350」というハイパワーであることです。「255g」の超々軽量設計で、フレーム長が「27インチ」にしたのは、ダブルスでの素早いラケットさばきをしやすくするため……。つまりかなり振れちゃうんです。フレームの厚さ変化は、【ビースト】などに使われている「薄い〜厚い〜薄い」、一般的にデュアルテーパーと呼ばれるスタイルです。

ガンメタリック主体でシブいコスメティックの【エンブレム】シリーズでは唯一、なんとも爽やかな「スカイブルー」をフェイス部フレームの内側に纏っています。こうしたイメージは、ちょっと女性的な柔らかさを表現するので、ベテラン女性ダブルスプレーヤーには評判が高いですね。優しく、大きく、力持ち。そして俊敏……。それが【エンブレム110】というモデルです。

プリンスの歴代ハイパワーラケットに注いできた叡智が詰め込まれた【エンブレム】シリーズの3モデル、それぞれに個性があります。ハイパワーモデルにこんなにたくさんの選択肢があるのは、プリンスだけです!

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。
試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー

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