これが勝利のカギとなることもある!
スピン増加だけじゃなく、ストリング環境を最善にコンディショニングする【SPIN PLUS II】は、「液体であること」が大きな特徴。

まずはその商品名どおり、「スピン量増加」を期待してください
〜【スピンプラスII】の恩恵を受けられるプレーヤーとは〜

SPIN PLUS II

このコラムは、2016年の4月にスタートしましたが、その第1回めに紹介したのが【スピンプラス】でした。それが3年の時を経て、【スピンプラスII】へと進化して登場します。再び注目したのは、これが他のテニスギアとはちょっと違う、特殊なポジションにあるストリングアクセサリーだからです。

これを使っていると、一般テニスプレーヤーの多くの方が「なに塗ってんの?」「そんなの知らなぁ〜い」とおっしゃるでしょうが、筆者としては、バリバリの競技者よりも、発展途上のプレーヤーにとって、とても役立つギアじゃないかと思っています。初中級プレーヤーには、ある意味で、「お助けグッズ」と言えるでしょう。

そのなかでも恩恵をもっとも強く感じていただけるのが「スピンをかけたいけれど、なかなか効果的なスピンがかからない」とおっしゃる方です。学生の競技テニスで、ガンガン打ち合うプレーヤーには必要ないかもしれません。だって助けてもらう必要なんか感じてないでしょ。「なかなかかからない」「もっとスピン量を増やしたい」という課題を抱えている方に、ぜひ試してもらいたいのが【スピンプラスII】なのです。

3年前のコラムで「スピンについては『増毛剤と思え』」と話しました。毛根がすでに機能しない状況では、いくら増毛剤を振りかけても効果は期待できません。これは「スピンをかけるための要素がスイング軌道に含まれていない」状態と同じことです。とても優秀な【スピンプラスII】という増毛剤を振りかけても、「根っこ」がないと、増やすことができません。つまり完全フラットのレベルスイングやスライス回転しか打てないプレーヤーには、スピン増加させてあげられないのです。

でも諦めないでください!

少しでも振り上げる要素を含んだスイング軌道になれば、【スピンプラスII】によって増毛……じゃなかった、スピン増加してあげられます。その秘密が「スナップバック」です。インパクトの瞬間、縦ストリングが横ズレしてから元に戻る動きが、打球に回転を与えるという事実は、科学的にも証明されているのです。【スピンプラスII】は、ストリングがクロスする部分の摩擦抵抗を減らすことによって、「スナップバック」効果を加速するためのストリングアクセサリーなんです。

ストリング本来の性能を発揮させるのに「邪魔者」が存在する
〜縦糸をズラすときに発生するガキガキという音がそれだ〜

SPIN PLUS II

逆に、十分なスピンをかけられるプレーヤーにとって、【スピンプラスII】による「スピン量増加効果」は薄いでしょう。だって、すでにフッサフサの髪がある人に、増毛剤をかけても、効果なんかわからないでしょう。むしろ縦ストリングのスライドが大きくなることによって、打球の飛び出しが遅くなると感じてしまうかもしれませんので、バリバリの競技プレーヤーは、違和感を感じるかもしれません。

ただ、ストリング同士が、それぞれの伸縮性能を発揮すべく「自在に動く」ようになるため、打球感がマイルドになる効果は、ハードヒッターにとっても大きなメリットとなります。また、この「縦横のストリングがそれぞれ自在に動く」ことによって、ストリング本来の伸縮性能が発揮されるため、「反発パワーが増加する」……ように感じます。なぜそんな言い方をするかというと、じつは「増加している」のではなく、「邪魔者がいなくなった」だけなんです。

「邪魔者」というのは、縦横ストリングの交差部分に発生する「摩擦抵抗」。縦ストリングを横にズラしてみると「ガキガキ」とか「ガリガリ」っていうときがあるでしょ。あれがストリングの自由な動きを邪魔する摩擦抵抗であり、縦横のストリングが互いに本来の伸縮性能(反発パワー)を殺し合っているんです。その結果、打球の飛びは悪くなり、インパクトでの打球感は硬く、クリアさを失ってしまいます。

テニスプレーヤーならば誰しも、張り上がったばかりの新しいストリングで打つ打球感は快適で、爽快な飛び性能を体感しているはずです。それが「邪魔ものなきインパクト」なのです。【スピンプラスII】は、愛用ラケットに張ってあるストリングの状態を、最大限にフレッシュに保つためのコンディショニングアイテムなのです。

【スピンプラスII】のおかげで勝てた……って?
〜相手に「惜しかった」と思わせない勝ち方ができる〜

【スピンプラスII】のようなストリングコンディショナーは、他にもあり、それぞれに個性がありますが、【スピンプラスII】の最大の特徴は「液体であること」です。こういったアイテムが機能するポイントは「縦糸と横糸が交差接触する部分」……つまり、糸同士が接する間に潤滑剤が入り込んでこそ機能するわけです。

液体であるおかげで、ストリング面にサッと塗るだけで、交差部分の内側へスッと入っていきます。縦糸をずらしてから塗って、元に戻すなどの作業は必要ありません。こうした【スピンプラスII】の使いやすさは、開発に当たるプリンスのスタッフが、「ユーザーの満足度」をとても重視しているからです。誰でも使いやすいように、どんなレベルのプレーヤーでも面倒なく使ってもらえるようにと考えているためです。

では、ストリングの動きが自由になったおかげで、実質的にどういった効果があるのでしょう? 「スピンがかかりやすくなる」「打球感がマイルドになる」というのはすでに挙げましたが、もっとメリットはないかと開発スタッフが打球追跡解析システム『トラックマン』を使って実験解析した結果、ベースラインから相手側ベースラインまで、なにも塗布しない状態より「3.5/100秒も速く到達する」ことがわかりました。つまり、それだけ打球スピードが速くなるのです。

あっ、今「なぁんだ……たったの3.5/100秒かよ!」って思ったでしょ。でも、知っている人は知っています。上級競技者レベルのラリーでは、このわずか3.5/100秒が決定的な違いになるケースがしょっちゅうあることを。
これまであなたの打球が相手ラケットの先端をかすめていたのが、【スピンプラスII】を塗ることで、やっと差し出された相手ラケットの後方、115cmに到達している……つまり確実なエースになるわけです。相手に「もう少しで返せた……惜しかった」と思わせず、「無理!」って思わせちゃうことのメリットは大きいですよ。

あなたはとくに何もしていません。頑張って速くスイングすることも、早いタイミングで打とうとする必要もありません。「【スピンプラスII】を塗るだけ」です。
なんだかテレビショッピングみたいですけど、実際にトラックマンが弾き出したデータそのものなのです。

ちなみに従来モデル【スピンプラス】と比べたときにどうなのか?
データは「−1.4/100秒」→「−3.5/100秒」の時間短縮を示しました。打球速度は飛躍的に速くなっているのです。

SPIN PLUS II

容量が2倍になったのにお値段は33%しか上がってない
〜【スピンプラスII】を上手な使い方で長持ちさせよう〜

SPIN PLUS II

さて、従来の【スピンプラス】が【スピンプラスII】になったことで、性能的進化があったことはわかりましたが、他には何が変わったのでしょう?

一見したときのパッケージデザインは同じ……いや、大きさがまるで違います。【スピンプラスII】のほうが、断然に長い。これは容量が「2倍」になっているため。従来モデルのユーザーから「プレー前にも途中でも頻繁に塗るので、もう少し長持ちしてほしい」という要望があり、これに応えるため、容量を一気に2倍にしちゃったのです。

筆者としては、この「思い切り」が好きです。普通ならば「容量20%アップ!」などとセコな増量ではありません。一気に2倍です!
価格も2倍……なんてことはありません。従来は半分で ¥2,400だったのが、倍になってもわずか¥800アップの¥3,200。これは実質的な値下げですよね。これも「メリットのあるアイテムを、できるだけ多くのプレーヤーに使ってもらいたい」というプリンスの願いが実現させたものです。

液体状の【スピンプラスII】は、従来モデルに比べて「性能持続力が伸びた」とも評価されていますが、プレー前に1回塗るだけでいいわけではありません。そのメリットを得続けるためには、「30分に1度」くらいの目安で塗布してあげてください。また「ストリングの横ズレが戻りにくくなった」と感じたときにも塗布しましょう。

【スピンプラスII】1本で、約300回の塗布が可能です。ただし、多く塗ればそれだけ効果があるというわけでありません。ストリングの交差部分に液体がダマになって溜まってしまうようでは塗り過ぎです。使っているうちに、自然に「適度な分量」がわかってきますから、必要なだけを塗布し、あなたのラケットに最適なストリング環境を保ってあげてください。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー