Prince Monthly Column

2017/12/14

なんだこれっ!?
普段着でテニスできるわけないじゃん? でも着てみたら、めっちゃテニスウェア…… いや、それ以上だった!

テニスウェアらしくないにもほどがある! だけどこれ……スゲぇ!
〜テニスコート+デニム生地+パーカー、つながらない違和感〜

さて、今月は何を取り上げようかなぁ〜、とカタログをぼんやり眺めていたとき、「んっ!?」と違和感を感じて凝視したのが、このアイテム。
どう見ても、一般アパレル。これを着て、黒いキャップをかぶり、両手をポケットに突っ込んで歩けば、青山でも広尾でも、まったく違和感がありません。
でも、もしこれをテニスコートでプレーし始めたら、ベテランのオジサマたちに「ちゃんとテニスウェアを着てきなさい」とお叱りを受けそうな見栄えです。

どうしてこんなパーカーをプリンステニスウェアから発売するのか? という違和感を感じると同時に、「なにかニオうな……」って。まるで2時間サスペンスに登場する刑事や探偵のように反応し、プリンスの担当者さんへメールを打ちました。
「今回はこのパーカーでいきたいんですけど!」
事前に、アパレルからピックアップしたいと伝えてはいましたが、彼は、まさかこれを上げてくるとは思っていなかった様子です。

違和感を感じつつではありながら、さっそく商品を送っていただいたわけですが、ちょっとドキドキしながらパッケージを開けました。なぜドキドキしたかというと、「もしもごく普通のデニムだったら……」と思っていたからです。もう締め切りも近いというのに、面白くなかったらどうしよう? 別アイテムの提案準備をしてないだけに、じつは半分くらいの不安があったことを、今だから告白しましょう。

袋から取り出して生地に触れると、我々が知っている、あのデニムの触感とは似ても似つかない柔らかさ。ゴワゴワ感などまるでなく、ものすごく柔らかい感じ。
いざ試着……。次の瞬間、「ガーンっ!」。
漫画の1コマに登場する、あの表情。オデコに数本の縦線と汗。もちろんアゴを大きく落として無言の衝撃感。
「なっ、なんやこれっ……、めっちゃ伸びるやん!」

超高級テニスアパレル『オーセンティック』を匂わせる見栄え
〜テニスウェアを遊ぶ心と、製品化する余裕〜

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プリンスには『オーセンティック』という、これまでのテニスウェアの括りから抜け出した高級アイテムブランドがあります。テニスウェアの感覚からすると、目玉が飛び出るほど高額。でもそのかわり、本物の超高品質素材を使い、「日本のあそこでしかできないんだよねぇ」と、一般アパレルを知っている人が見ればその価値が知れる、卓越した技術の縫製によって仕立てられています。

昨今のテニスウェア市場は、お世辞にも好調とは言えません。それは全メーカーに言えることです。全体的に値下げの傾向さえありますが、そんなご時世に、超高級テニスアパレルを出すという酔狂なことをやってくれるのがプリンス。
そもそもテニスとは「遊戯」。140年前、英国中流階級のホームパーティーでフォーマルに着飾った男女が一緒に愉しむことができる遊戯として発展した経緯があります。そうした懐古的な空気感をしのばせながらも、本物の上質さを形にしたのが『オーセンティック』です。

普通はできないことです。でもね、ここまで「遊ぶ」をやっちゃうわけです。「余裕」の衣を着た「挑戦」。そういえば、テニス大ブーム時代のプリンスのイメージって、たしかに「遊び心」でしたもんね。
ですから、もはやプリンスがどんなものを提案しても、そーんなに驚くことはありません……でした。
でも『オーセンティック』の遊び心が、ちゃんとレギュラーアイテムに降りてきていたのです。

隠された性能……普通のパーカーよりも自由自在な動きが可能
〜40年前に出会った「のびのびジーンズ」の衝撃ふたたび〜

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このパーカーに注目したのは、商品名のせいでもあります。写真を見ただけでは【スウェットパーカー】と言われてもピンとこないからです。このネーミングからは「楽に着られる」「動きやすい服装」をイメージします。
なのに「デニム」っぽい……。

筆者は、小学生時代にスピードスケートをしていたため、細い上半身に似つかわしくないほど立派な太腿を持っていました。中学生でテニスを始めても、その太腿は細くはなりません。
そんな頃に流行り始めたのが「ジーンズ」。同級生たちがみんな「Gパン」を履いていましたが、ウェスト72cmなのに、筆者の太腿が通るズボンは、ウェストサイズ 85cm。いまでこそ、かなり太めの人もGパンを履けますが、当時の田舎には、そんなサイズのGパンはありませんでした。

数年後、ほんのちょっと太腿がすっきりした頃、ついに夢のGパンと出会います。
それが『のびのびジーンズ』。ジーンズに見えるのに、伸縮性があり、あの太かった太腿が通ってくれたのです。感動でした。ついに自分も友達と同じような服装ができる!って。

この【スウェットパーカー】は、あのときと同じようなインパクトを与えてくれたのです。いやいや、伸びること伸びること。どんな動きをしても、肩、腕、肘にストレスがありません。外見の「ジーンズルック」からは想像がつかないほどの伸縮性。
これはもう、立派なテニスウェアです!
「デニム」と「パーカー」がどうしても一致しなかったのが、着てみて初めて納得できました。テニスウェアでも、プリンスは面白いことをやるねぇ〜。

最近のプリンスは「隠す」。それを見破る面白さを感じて!
〜意外性で遊ぶ。そうなったらオトナだね〜

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この【スウェットパーカー】には、プリンスがよく見せるようになった「隠しのテクニック」が盛り込まれています。まず、驚くような伸縮性を、デニム素材っぽい見栄えに隠しています。

さらに、普通は胸や肩あたりに目立つように記されるはずの『prince』あるいは『p』のロゴが見当たりません。「そんなはずは?」と探してみると……、
ありました! ボディの左脇に小さなタグが縫い込まれていました。

こんなテニスウェアメーカー、見たことありません。
プリンスが最初に隠しのテクニックを見せたのは、テニスシューズ【ツアープロZ II】。漆黒のアッパーには、ラインも、それらしきデザインもありません。ただ一つ、控えめな大きさの『p』マーク。でもプリンスのイージカラー:グリーンだ際立って見えました。
その次が、このコラムでも紹介したバッグの数々。【URシリーズ】【LDシリーズ】、さらに最新モデルの【OUTDOORシリーズ】も、ロゴを極小にして、一般生活での汎用性を訴えています。

そして極めつけが、この【スウェットパーカー】ですね。普段着としても、きわめて自然。一般アパレルをテニスで着ようという流れがあるなか、立派に機能的なテニスウェアなのに、それを普段の生活でも着られる……、まさにこれは『プリンスの逆襲』と言えますね(笑)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。
試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー