Prince Monthly Column

2018/08/10

これは使える!
スピン・高耐久・打球感に対するナイロン&ポリ「2方向」からのアプローチ。
それぞれのストレスを減らし、満足感を高めたストリングが同時登場!

ボールが当たるのは「ラケットフレーム」じゃなく「ストリング」だよ
〜フレームが「骨」で、ストリングが「筋肉」〜

テニスを楽しまれる方の多くは、ラケットのことをとても気にします。テニス道具の中でもっとも高価なアイテムですから、その気持ちはわかります。でも「ラケット」は、「フレーム+ストリング」で完成するもので、ストリングの重要さをよく理解している方は、少ないような気がします。

ラケットの構成を車に喩えれば「フレームはシャーシ、ストリングはエンジン」ですし、人体に喩えれば「フレームは骨、ストリングは筋肉」です。どちらも、パワーの発生源はストリングであり、それを支えるのがフレームであることを示していますね。そのくらいストリングはテニスにとって大切なアイテムなのです。

同じフレームを使っていても、張り上げるストリングによって、ラケットのトータル性能は、驚くほどの違いとなって表われます。みなさんは、どのくらいストリングに気を遣っていますか?
自分に最適のストリングが、どんなものであるかを知るためには、まずいろいろ使ってみることが重要ですね。プリンスのラケットは高いクオリティを持っていて、テニスブランドの中でも、積極的にイノベーションを追求するブランドです。それは新作【プリンスX】を生んだことでご理解いただけると思いますが、じつはストリングでも、つねに前向きに取り組むブランドなのです。

無理してポリを使わなくても、【TOP SPIN XX】がイケるじゃん
〜張りがあって・スピンがかかってくれて・高耐久〜

TOPSPIN XXパッケージ

この秋、プリンスから登場する新しいシンセティックストリングは2種類。ひとつはナイロン系(ポリアミド系)モノフィラメント構造の新作で、もうひとつはポリエステル系の画期的ニュータイプです。

かつては、ほとんどの一般プレーヤーがナイロン系ストリングを使用していましたが、現在では「切れにくい」「スピンがかかる」ということで、ポリエステル系が隆盛を誇っています。ですが、どちらを選ぶかで、打球結果・打球フィーリングは大きく違ってきます。ガンガン打つパワーを持っているプレーヤーに適しているのはポリエステル系です。でも、ほとんどの一般プレーヤーは、ナイロン系で十分に満足できるでしょうし、今日のナイロン系ストリングは、驚くほど進化しています。

ナイロン系のありがたさは「打球感のマイルドさ」です。もっとも柔らかく感じさせてくれるのはナイロン系マルチフィラメント構造ですが、モノフィラメント構造でも、ポリエステル系よりは、はるかに柔らかい打ち心地です。また、多くのテニスファンが魅力を感じる「スピン性能」についても、かなりの高性能を発揮するものがあります。

そこでプリンスの新作【トップスピンXX】を紹介しましょう。センターに太めのモノ芯があり、まずその周囲に高耐熱性新素材であるXNF(エクストラナチュラルファイバー)をリボン状にして螺旋状に巻き付けます。これはきわめて熱に強い素材で、インパクト時にストリングに発生する熱によって溶かされることがなく、モノフィラメント構造の命である芯糸を強靭に守ってくれます。

TOPSPIN XX

さらにその周囲に、芯糸よりもグッと細い側糸を3本、その間にもっと細い側糸を3本ずつ配置する構造で、非常に複雑なものです。側糸というのは、芯糸を守る役目がありますが、このくらいの太さになると、側糸それぞれも「伸縮による反発性能」を持ち、爽やかで瞬発力のある反発感を感じさせてくれます。

また、やや太めの側糸は、ストリング表面に凹凸を作り、ボールへの引っ掛かり感を高めてくれます。それがモデル名【トップスピンXX】の由来でもあります。張られる前のストリングを触ってみると、ビックリするほど「柔らかいっ!」と感じます。一般的にモノフィラメント構造は、やや硬めに仕上がるものですが、すごくしなやかで、瑞々しさを感じさせます。

そして肝心の打球感ですが、「マイルドだけど、張りがある」感じです。軽いスイングでインパクトしても、モノフィラメント構造独特の飛び・瞬発力・喰い付き感があり、極端に擦り上げなくても十分なスピンがかかってくれます。

スピン系ストリングというと、どんなふうに打っても強烈なスピンがかかると誤解してはいけません。打球にスピンがかかるシステムにもいくつかあるので、自分がどういうタイプであるかは、コーチやスキルの高い先輩などに見てもらい、それに適したストリングを選ぶのがいいですね。

この【トップスピンXX】は、ガリガリに擦り上げて引っ掛けると方にもスピンの増量感をもらたすでしょうが、そういうプレーヤーがスピン増量を期待するよりも、ドライブ系のスイングをするプレーヤーが「今よりもスピード感あるスピン打球を放ちたい」とか、「スピンをかけているつもりなんだけど、なかなかかかってくれない」といった方に大きなメリットをもたらすでしょう。

先輩にポリエステル系を薦められて使っているんだけれど、打球感が硬くてシンドイ……とか、必死にスイングしているんだけれども、思ったほどボールが飛んでくれないと感じている方は、ぜひ【トップスピンXX】の16ゲージを試してみてください。ストリングは「細けりゃいい!」ってもんじゃありません。きっと元気のある打球に、ビックリされることと思います。

構造的に機能する画期的なスピン系ポリエステルがプリンスに登場
〜ポリなのにマイルド! でもちゃんと反発感と飛びがある〜

Toue XX SPINパッケージ

さて、もうひとつの注目アイテムが【ツアーXXスピン】です。これはれっきとしたポリエステル系ですが、打球感が優しく、ボールに喰い付く感触の大きい、個性的なストリングです。最近のポリエステル系ストリングの多くが「柔らかい打球感」を謳い文句にしていますが、それはナイロン系の柔らかさと同じだと誤解してはいけません。ポリエステル系は、あくまでポリエステル系なのです。

それでもポリエステル系に柔らかさを持たそうとすると、素材的な調整をしたりとか、ポリエステル単一糸ではなくて、複合構造にしたりとかの工夫をします。ただ、それによってポリエステル系らしい弾き感や、強烈に叩いたときのボールへの喰い付き感が薄れてしまい、なんだかボンヤリしたフィーリングになって、飛んでくれないと感じるケースもあるのです。

ところがこの【ツアーXXスピン】は、強靭で弾き感の強いポリエステル系素材を使いながら、構造的にマイルドなインパクトを実現してしまいました。その秘密は「ファイブバルブ製法」によって組み上げられた組織によるものです。

TOUR XX SPINシリーズ

通常のポリエステル系ストリングは、細い1つのノズルから射出されたポリエステル糸を伸延して作りますが、「ファイブバルブ製法」は、中心角72°の扇形ノズルを5つ組み合わせ、それぞれのノズルから射出されると同時に5本を組み合わせて1本の単一糸に接合してしまうのです。

中心部は完全に一体化してしまうので、仕上がり時の内部構造はポリエステル系の単一糸と同じですが、外層部には「深い溝」が残ります。これこそが【ツアーXXスピン】の最大ポイントなのです。通常のポリエステル系ストリングは、たとえ「多角形であっても、単一糸」なので、ストリング自体の一部が潰れて変形するようなことはありませんが、【ツアーXXスピン】の外層部は5つに割れているので、それぞれのブロックが潰れやすくなります。

それによって何が起こるかというと、ボールが当たった部分の表面が潰れることで、衝撃を分散し、打球感をマイルドにしてくれるという仕掛けです。これを考えた技術者の発想力には敬意を表します。プリンスというブランドに猛烈に驚かされたのは【MORE】という新構造(これが後の【O3】構造につながる)を生み出したときのことです。発想の奇抜さはもちろんですが、それを実現してしまうという根性です。ラケットの製法にわずかな知識があれば、それがいかに非常識かつ面倒なことか。また、製造システムを構築するための投資コストは莫大なものになることを知っていますから、普通は……やりません。

プリンスは……やっちゃうんです。ポリエステル系ストリングの表面だけが割れていて、それが潰れやすくなるために衝撃が緩和されるなんて発想を、製品にまで仕上げてさせしまう「根性」です。この効果のおかげで、打球感がマイルドになっただけでなく、ボールへの喰い付きがよくなりました。

一般的なポリエステル系ストリングでは、ボレーのようにストロークの短いショットでは、ポリエステルの伸縮性を発現させるまでに至らないため、ボレーが短くなったり、ボールがストリング面から離れるのが早くて、しっかり抑えることができなくなっちゃうことがあります。

しかし【ツアーXXスピン】だと、ボレーでもちゃんとボールを抑えられて、鋭い打球を相手コートに打ち込むことができます。また部分的に凹んだことや、深い溝がボールのフェルトをしっかり喰い、スピン性能が向上します。ポリユーザーが好む「高速パワフルスピン」もバッチリです。

全体が1本のポリエステル糸なので、これまでのマイルド系ポリに見られたような「伸縮性能に影響が出て飛ばない」とか、「打感がボヤける」ということはなく、超高速インパクトにyほって引き出される強烈な瞬発性能は、いかにもポリエステル系!
どうです……使ってみたくなったでしょう!

「ゲージ表記」と「ミリ表記」の違いって、知ってますか?
〜数字が大きくなるほど細い、ゲージ表記を理解しよう〜

ところでみなさんは『ゲージの数値』について、正しく理解していますか? ゲージとは「ワイヤーの太さを表わす規格の一つ」として米国で生まれた基準であり、「ミリ単位の表示法」とはまるで違うものです。ですから「このゲージは1.25mmです」と言うのは間違いなんです。

現在の日本では、ストリングの太さを表わすのに使われる単位として一般的に多いのは「1.25mm」とか「1.30mm」というミリ単位の表示法で、メートル法による表示は、我々日本人にとってはわかりやすくなっているかもしれません。しかし、アメリカではゲージ表示が一般的で、「16」とか「17」と表記されます。プリンスのストリングはアメリカでも販売されるので、統一的にゲージ表示を採用しています。

ゲージ表示法は、ミリ表記とは反対で、「数字が大きいほど細い」ということを表わします。
ゲージというのは「米国ワイヤゲージ規格」に基づいた表記法であり、英語では「American wire gauge(略称:AWG)」。厳密に言うと、AWG No.0000の外径を0.46インチ(11.68mm)、AWG No.36の外径を0.005インチ(0.127mm)を基準と定め、この間を44段階に分けたのものです。

これに正確に従うと「16ゲージ=1.291mm」ですが、テニスストリングでは「16ゲージ=1.30mm」として扱われるのが通常です。これを中心に「0.05mm」刻みで設定され
 15 =1.40mm
 15L=1.35mm
 16 =1.30mm
 16L=1.25mm
 17 =1.20mm
 17L=1.15mm
というのが目安で、「L」というのは整数ゲージの中間値として使用します。正しいゲージ表記法ならば「17ゲージ=1.15mm」と0.5mmズレますが、わかりやすさを重視して、こうした目安ができたのだと考えられます。ただ最近ではさらに「16L」「17L」を省いてズラし、
 17=1.25mm
 18=1.20mm
と表記することが多く、プリンスではこれを採用しています。おそらくこれをきちんと知っている人は少ないはずですから、パーティーなどで披露すると、知識レベルの高い人!と見てもらえるでしょう(笑)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。
試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー

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