漆黒を纏ったスリムボディ。究極素材「テキストリーム」が可能にしたしなやかさ&パワフルさ……夢の融合

その美しさに心奪われる……
〜シックでありながら、えも言われぬ色気を感じる〜

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一昨年よりプリンスは新素材テキストリームを使用したモデルを次々とリリースしてきました。どのモデルもボディ全体を黒で覆うコスメティックで「テキストリームラケット」の統一性をアピールしながら、フェイス部の内側のカラーリングをモデルごとに使い分け、我々に強烈な印象を与えたのです。

一気に模様替えされたラインナップは、並べられたときに何とも美しいものでした。
テニスショップではブランドごとに陳列されることは少ないので、さほど目立つことはありませんが、プリンス展示会場ではオレンジ、イエロー、グリーン、レッドと、まるでポスターカラーが綺麗に並べられたよう。その色彩デザイン感覚は、シンプルでありながら魅惑的なものです。

そしてついに……「すべてを黒で覆ったモデル」が登場。まるでテキストリームシリーズの究極モデルであることを訴えるかのような漆黒デザイン。他のモデルはツヤのないマット仕上げであるのに、これだけはいかにも厚く塗り上げられたクリア塗装仕上げです。まるで日本の漆塗りのような黒の輝きがあります。

そんなボディにプリンスグリーン鮮やかに、ロゴマ−クが染め抜かれる。
逆にそれが鮮烈で、その姿を初めて見た瞬間にドキッ……。
ハートを奪われてしまったのです。

New O-Port & プロタイプの2スタイルで適応
〜スイングパワーで打ち抜く、ボディパワーで弾き返す〜

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プリンス社は、ブランドのスタート時から、構造的機能のテクノロジーを謳ってきました。
デカラケ、長ラケ、MORE構造や、O3、EXO3など、構造的な革新性で勝負してきたブランドです。
そのプリンスが注目した新素材が「テキストリーム」。
プリンスの独創的構造主義には、テニスラケットを発展させるために大きな価値があるし、もの作りの本質と思いますが、その際の素材の選定も重要な意味を持つのです。

それは、素材自体の性能的優秀さを利用するだけでなく、その素材を使うことによって、これまでは叶わなかった、まったく新しい構造が実現する可能性もあるからです。
そう、【ファントム 100 XR-J】は、まさにその姿勢から生まれた秀作なのです。

2011年から、プリンスはスウェーデンにあるテキストリームを手掛ける『オーキシン社』と、この優れたカーボン素材をテニスラケットに使おうと企画をスタートさせ、2014年後半からテキストリーム搭載モデルを投入しました。

その超新素材カーボンの特徴を最大限に生かした……いや、テキストリームがあったからこそ生み出されたのが【ファントム 100 XR-J】【ファントム プロ 100 XR】の2モデルというわけです。
【ファントム 100 XR-J】は、現代ラケット最小厚、16.5mmという超スリムボディで、プリンスならではのパワーアシストグロメットシステム「New O-Port」を搭載するモデル。
また【ファントム プロ 100 XR】は、プログロメットを備え、最大厚22mmのボディによってパワーを投入するスタイル。「O-Port」による独特の球持ち感よりも、コンベンショナルな反発システムが好きなプレーヤーのためのモデルです。

それぞれのパワーレベルは「800」「825」と、極薄ボディの【ファントム 100 XR-J】が、やや抑え気味ですが、スリムさや「New O-Port」のおかげで、空気抵抗が少なく、高速スイングが可能になるため、プレーヤーのスイングパワーを打球に活かすことができるのです。

テキストリームの配置角度「斜め45度」が夢の性能を生み出した
〜「面下部からシャフトの剛性を25%アップ」が何をもたらすか?〜

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両モデルにおいて、テキストリームが採用されている部分は、フェイス下部からグリップにかけてのシャフト部分です。そんなに優れた素材ならば、フレーム全体にテキストリームという単純な発想があるかもしれませんが、もしそんなことをすれば、あまりに硬くなりすぎて、むしろ扱いにくくなってしまいます。
もちろん、テキストリームを、どこにどれだけ使うか、数多くのテストの積み重ねで検証されています。
テキストリームは、これだけで十分……というより、これがベストという結論でした。

そんな検証テストのなかで、「どのように配置すべきか?」も試されました。
すると、テキストリームの編み方向が「斜め45°」になるように配置すると、静的なしなり剛性は変わらないのに、捻れ剛性が25%も向上することがわかったのでした。

捻れが少ないということが、どんなメリットをもたらすか? みなさんは理解できますか?
「フレームが捻れないから、コントロール性が高い!」という謳い文句は多く見かけてきましたが、じつはそれだけではありません。
フレームが捻れると、そこでかなりのパワーが失われてしまうのです。
では捻れないことで、反発エネルギーのロスを少なくすることができる……?

フレームは真っ直ぐにしなり、そのまましなりが戻って、ボールを押し出します。
エネルギー伝達性が向上して、従来どおりの力で打球のパワーアップを図ることができ、また少ない力でも十分な飛びを実現させることができるというわけです。
ですからシャフトが太くてゴツい中厚モデルが増えているわけですが、【ファントム 100 XR-J】・【ファントム プロ 100 XR】は、どちらもスマートなシャフトで、軽やかにパワーアップしてしまうのです。

New O-Port & プロタイプの2スタイルで適応
〜インカレトップレベルが語る【ファントム】〜

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最後に、プリンスを使うインカレトップクラスの2人の試打感想を入手したので、共通ポイントをまとめて披露しましょう。

・久次米夏海 (14インカレインドア・国体単優勝、15インカレ単準優勝)
・大友優馬 (インカレ単複ベスト4、インカレインドア単複ベスト4)

「スリムな【ファントム 100 XR-J】は310gと思えないほど、軽くスイングできるし、16.5mmの不安などまるでなく、想像よりはるかに飛ばしてくれます。『New O-Port』のおかげでボールの掴みがよく、意識してスピンをかけようとしなくても自然に回転がかかってコートに収まってくれます。ボレーでも十分な決定力を持ち、明らかに速いサーブが打てるのも魅力です。とてもスリムなフレームからは想像できないほど爽快に打てることに驚きです」。
「また【ファントムプロ 100 XR】は、とても振り抜きやすくて高速スイングができるのに驚きました。とてもパワーがあるため、スピンをかけてコートに収めるスイングのプレーヤーに向いています。スピン量はスウィングスピードに比例して素直に調整できるのも特徴ですが、スピン量を控えて、面をしっかり作って振っていくときの高速カウンターショットにはビックリ。それを得意とするプレーヤーにとって大きな魅力でしょう」。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー