プロが唸るセミウェットの新世界!「グリップテープで、こんなに違うなんて……」。競技者仕様に与えられる【Phantom】の称号

プロが唸るセミウェットの新世界! 「グリップテープで、こんなに違うなんて……」。 競技者仕様に与えられる【Phantom】の称号

ラケット操作の集中コントローラー……グリップ
〜 もっとも安価なカスタムギアが「グリップテープ」 〜

みなさん、ラケットフレームのことはやたら細かく情報を集めるのに、ストリングのこととなると、驚くほど淡白……っていう友達・知り合い、いませんか?
今回は、ストリングっていうのはね……って、話をするわけじゃないんです。もっと「まぁ、どれでもいいか」「この色が可愛いから」とかって決められてしまうテニスギア『グリップテープ』のお話なんです。

ほんとに軽視されてますよね、グリップテープって。たしかに「もっとも安いカスタムツールのひとつ」がグリップテープですから、価格的に身分が低いとされがちです。だから、べつに細かく考える必要もないと思うのでしょうが、そんなもんじゃないんですよ。

よく考えてみてください。多くの人がご執心のラケットフレームは、実際にボールに接触することはありません。ボールを弾き返すのは「ストリング」です。言ってみれば「スウィングでの作用点」。フレームは、力や方向性を伝えるための「枠」です。もちろん、いろんな機能によって重要な働きをしてくれるんですが、ボールに直接に接触するわけではないですね。もし接触することがあれば、それはミスショットですもん。

さて、ストリングが「スウィングの作用点」ならば、「力点」ってどこでしょう?
そうです! グリップです。
プレイヤーの意思、スウィング方向、スウィング速度、インパクトのタイミング、ボールとの接触角度など、プレイヤーの動きのすべてが「グリップ」に集中して作用する「力点」となってラケットへ伝達されます。

プレイヤーの意思・動きを、インパクトへと伝えられるのは「グリップ」だけなんですよ!
また、グリップは「インパクトの状況」を把握するための「繊細なセンサー」でもあります。プレイヤーとラケットを繋ぐ「唯一の部分」がグリップであるのに、どうしてそんなに軽々しく考えることができるのでしょう?

今日のグリップは、そのままでも十分に使えるくらい進化しています。それなのにグリップテープを巻きますよね。初中級者がショップでラケットを買うと「グリップテープはどれにします?」って、あたりまえのように訊かれます。

テキトーに選んじゃう人が多い風潮のなか、グリップのことをとても気にするプレイヤー層が「上級者」「競技者」です。彼らは多くの経験において、グリップがいかに重要であるかを知っています。

いろんなものを試し、自分にとって最適なものを選んで、購入に際してはいっさい迷うことなく、まとめ買いしちゃったりします。それが「競技者」ですが、グリップテープも進化します。自己最善を求めるのであれば、進化についていくべきです。「自分はこれしか使わない」と決めちゃってる方も、ベストフィットを探すレーダーを「OFF」にしちゃってはいけないと思います。

微妙さがむずかしい「セミウェット」ってナニ?
〜 ドライに吸汗、しっとりタッキー 〜

グリップテープという道具が誕生したのは、まだ木製のラケットフレームが残っていた時代のこと。かれこれ40年前のことですね。最初のテープは包帯のようなもので、その後に粘着性の液体を沁み込ませた紙製メッシュテープから、不織布にウレタン素材を塗布した「ドライタイプ」が登場します。

これが流行ったきっかけは、トッププロがこぞって使い始めたからです。当時の若者はみんな「なんだアレは!?」と注目しました。当時のグリップはすべて天然レザー製がデフォルト。汗を吸うにつれて硬質化し、滑りやすくなるため、プロたちはそれを防ごうと「滑りにくく、力が伝わりやすくなる」グリップテープを巻いたのです。

当初はそのタイプしかなかったため、単に「グリップテープ」と呼ばれましたが、しばらくして、表面がペタペタしていて、手のひらにくっつく感じが強いテープが発売され、「ウェットタイプ」と呼ばれました。そうなって初めて、従来のものが「ドライタイプ」と呼ばれるようになったわけです。

汗を吸ってくれる感じが強いけど、表面のウレタンが摩耗に弱いドライタイプ。手のひらにくっつく感じが強くてグリップを回されにくいけど、逆にグリップチェンジなど微妙な握り替えもしづらいのがウェットタイプ。それぞれにメリット&デメリットがあり、プレイヤーの要求や好みによって選ばれました。

でも、そのメリットvsデメリットを埋めようと登場したのが「セミウェット」というジャンルで、ウェットのようにペタペタしすぎず、わずかにサラッとしたフィーリングを残そうというのが狙いです。何事も中庸を愛する日本人は、ここぞとばかりに飛びつきましたが、やがてブームは去ります。ウェットタイプがペッタペタして使いづらいと思っていたら、使ってるうちにペタペタ感は消えてしまうので、「最初から中庸」のセミウェットを求める声が薄れたからでした。

でもね、数多くの一般プレイヤーに見られるように「テープの汚れが目立つまで巻き替えない」(目立っても巻き替えない)場合はいいでしょうが、頻繁に巻き替える……あるいは試合ごとに巻き替えるという競技プレイヤーには、巻き替えたばかりの「最初が大切」なんですね。ペタペタし感触を違和感と感じる競技者にとって、ウェットタイプは使いづらいという声も長く続いていました。

そんな声に応えようと登場したのが、プリンス【PHANTOM PROFESSIONAL TYPE】
通称【ファントムグリップ】です。パッケージ状態では表面に透明フィルムが貼られていてウェットっぽいのですが、握ってみるとペタペタした感触というよりも「しっとりした感じ」で、新品の状態から「自然」。

「競技者のために、しっとりした感触を残しながら、グリップチェンジしやすく、ちょっとドライな握り心地」を実現したアイテムです。モニターとして使った多くのプレイヤーが「この感触は特別なもの。手のひらにくっつきすぎず、微妙なグリップチェンジも快適に行なえる」と高く評価しています。

ちなみに筆者が友人の女子プロプレイヤーに1本渡して試してもらったところ「グリップテープひとつで、ここまで操作性が違うなんてビックリです。今後、これの使用を検討します」とコメントを送ってくれました。

普通厚派 or 極薄派? 握り具合のバリエーション
〜 それぞれのメリットを知って選ぶ 〜

PHANTOM PROFESSIONAL TYPE ファントムグリップ

筆者が「あれっ、これって他と違う」と感じたのは、【ファントムグリップ】を巻くときからでした。なんだか「巻きやすい」んですね。テープを巻くときには、幾ばくかのテンションをかけながら巻きますが、やけに伸びてしまうように感じるテープもあります。でもこれは「伸びは抑えめ」の感じで、元グリのアンジュレーションにピタリとハマっていきます。

テープの端を重ねていくときも、超ウェットタイプのようにペタペタくっつきすぎることがないので、もし巻き直すことになっても、とてもスムーズにできます。テープ自体の厚さは公称「0.6mm」ですが、巻く時の伸びの違いで、世の中には【ファントムグリップ】の「0.6mm」よりもはるかに厚い「0.55mm」もありますよ。体感的には、平均的なウェットタイプより、ちょっと薄いくらいに思います。テープ自体も、少し「カッチリした感じ」です。「うん、たしかに競技系プレイヤーが好きな感じだよね」。

使用中の感覚としては、「ペタペタしない」「しっとり感がある」「元グリからのダイレクト感を邪魔しない」「テープの端がめくれあがらない」など、いっさいの違和感がないですね。天然レザーを元グリとしているプレイヤーには、そのグリップの角の感触など、カッチリさを明確に伝えてくれます。

またシンセティックの元グリでは、【ファントムグリップ】がクッション感を助長することなく、オリジナルのクッション感が保たれる感じですね。つまり、必要以上にフワフワしていない、「自然体を感じさせる」と表現するのがいいと思います。

この明確に競技者志向である【ファントムグリップ】とともに発表されたのが【EXSPEED GOKUUSU TYPE】です。プリンスの代表モデルとして人気のウェットタイプ【EXSPEED II】の極薄タイプとして新展開されます。

特徴は「極薄なのに高耐久」ということです。テープを巻くことでグリップを太くしたくないプレイヤーのために「0.39mm」で、グリップサイズへの干渉を抑えてあります。これまでの一般的な極薄タイプは、「薄いけどすぐにめくれたり破れたりする」と、耐久性については諦められていましたが、【エクススピード極薄タイプ】では、明らかな高耐久を感じることでしょう。

ウェットタイプのタッキーなフィーリングをはっきりと感じるのですが、薄くてフワフワ感がないので、グリップチェンジの邪魔になりません。まさに競技系プレイヤー向きです。また筆者が「これは!」と感じたのは、やはり「巻きやすい」ということ。極薄のテープって、慎重に巻かないと「シワになりやすい」ものなんですが、こいつは気を遣うことなくすいすい巻けちゃいます。

ここで紹介した両モデルとも、カラーは「ホワイト」「ブラック」の2色展開。カラフルさなんか必要ない! っていうところが、いかにも「競技者需要」に対応していますよね。パッケージは「1本入り」「3本入り」の2種類です。

「グリップテープはこれと決めている!」というプレイヤーも、まずは1本入りを買って試し、その違いに驚いてください。
どこのラケットを使っていても、「グリップは【ファントム】だね!」という方が確実に増えると思います。
プリンスグリーンのフィニッシュテープが「ファントム」の証です!

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー