憧れだった「トーナメントバッグ」の現代版最新鋭!バッグ好きにはグッとくる、【TC420 ワイドラケットバッグ】のスグレ度。

憧れだった「トーナメントバッグ」の現代版最新鋭!バッグ好きにはグッとくる、【TC420 ワイドラケットバッグ】のスグレ度。

バッグの在り方は、テニスの時代を表わしていた
〜 「どう使いたいか」と「どう見られたいか」 〜

60代以上の方にしかわからないかもしれなませんが、1980年代に世界的な大テニスブームが巻き起こるちょっと前、もっともカッコいいバッグが「トーナメントバッグ」と呼ばれるものでした。横長で、テニスラケットが完全収納でき、固いハンドルが付いたハードケース……それが「トーナメントバッグ」。これを持って試合会場に現われたヤツは、誰からも一目置かれたものです。

いつしか、そんなエレガントなスタイルは消え去り、もっとカジュアルで軽くて、「テニス、やってます!」という主張を担いでいるようなのが「ラケットバッグ」です。その走りこそプリンスが選手用に支給した「グリーンに prince の白ヌキロゴ」のラケットケースでした。ハンドルも何も付いていなくて、選手はそれを脇に抱えてコートに入ります。
もう、たまらなくカッコよかったんです!

それにストラップが装備され、一般プレイヤー向けに作られたのが、「ラケットバッグ」。当初は「ただラケット型のバッグ」でしたが、機能的にも進化し、「テニスに本気」を感じたい若者は、同じラケットを少なくとも2本以上持ち、その表現としてラケットバッグを担ぎました。

ところが今、一世を風靡したラケットバッグスタイルは、リュックスタイルで背負えるようになり、本当に本気でテニスをする学生か、ジュニアプレイヤーたちばかり使っています。大人になった元テニスボーイたちは、「オレ、ガンバってます!」的な雰囲気に野暮ったさを感じ、普通っぽいスタイルでテニス移動できる方向へ趣を変えています。

こうした流れを汲み取って開発されたのがプリンスのバッグ群、『テックシリーズ』です。最近では社会人だけでなく学生諸君も「それっぽすぎず、通常私生活でも使えるバッグがいいよね」という嗜好が強くなっています。でも、普通のバッグでテニスのための移動をしようとすると、ラケットを収納したり、シューズのためにわざわざ別の袋を用意しなければならなかったり、まぁ、あれこれと面倒なわけです。

「だったら、テニス移動に便利に作られているけど、普段使いもできるのが便利じゃねっ」ってことで、こうしたスタイルのテニス用バッグが大流行りしてるんですね。前作の「テックシリーズ」で大好評を得たのは、そうした企画製作意図が、ズバリお客様に届いたからでしょう。バックパックならば日常生活、大型トートならばちょっとした旅行にも使えちゃうのが嬉しいですよね。

今回の「テックシリーズ第2弾」では、同じタイプでも、細々とした部分に改良を施し、さらに使いやすくなっていますよ。前作ではプラスティックパーツのロゴマークでしたが、新「テックシリーズ」では、落ち着いた紺色にマッチするようにと「織りネーム」のロゴがあしらわれています。

そしてシリーズに新たに加わったのが、デッカい「ラケットフル収納型ラケットバッグ」です。こいつ……カバン好きが見ても、なかなかよくできてるんですよ。

こんなにデカいのに、開発者による「配慮のかたまり」
〜 1680デニールの大容量オールインワン 〜

数日前、自宅に【TC420】のサンプルが届きました。
いや……、デカいっ。
展示会場で見た感じより、はるかにデカい気がします。完全角型ですから、ラケットバッグよりも大きく感じて当然ですけど、確実に「一般的なラケットバッグ型よりも大容量で、荷物の収納も合理的にできそう」です。

じつはこの「この形状」、草トーナメントプレイヤーやプロコーチには、とても人気のスタイルなんです。荷物は多いけど、あまりテニスっぽさは出したくないって方が選びます。しかもこの【TC420 ワイドラケットバッグ】は、完全に「ネービー1色」で、シックなデザイン。ちょっと見には「キーボードでも入っているのかな」という雰囲気じゃないですか。

全体に使われている素材は「1680Dポリエステル」。「1680D」というのは、織物に使われる繊維の太さを表わしていて、「D」はデニールと読み、1デニールは長さ9000mで1gの糸を表わしますから、「1680D」は長さ9000mで1680gの糸を使用した商品ということです。

ストッキングなどに使われる「30デニール」などに比べると、「1680D」は、ものすごく太くて頑丈な糸が使われていることを意味します。一般的なデイパックなどは「600D」くらいで十分な強度を発揮しますから、大切なテニス道具を安全に運ぶんだからという「思いやり」と感じます。

筆者が見て、「ここは開発者が頑張ったな!」と思える部分を紹介しましょう。
まず「バッグを置いたときに、底部が汚れたりビショ濡れになったりしない」ように配慮されていること。いろんなバッグを見ればわかりますが、「地面にベタ置き」されることに対処しているバッグはあまり見かけません。

【TC420 ワイドラケットバッグ】は、横置きのとき底になる面の各コーナーに「高さのあるスタッド」が打たれていて、底面を浮かせてくれます。また、縦位置で置いたときも、底部四隅に高さ8mmのピラミッド型シートが張られ、縦に置いた瞬間の衝撃を緩和したり、水濡れを防いでくれるようになっています。

それから、使って便利に感じるのが、「ファスナーの引き手」が、すべてリング状であることです。いろんなバッグを使ってきましたが、この「リング状引き手」は、大きくてすぐに指が引っかかってくれるので、小さな引き手を探したり、つまみ損ねたりしてイライラすることがなく、もっとも使いやすい形状です。

そしてショルダーストラップの工夫の数々がまた「スグレもの」。まず「左右一体型ストラップ」であることです。左右セパレートになっていると、背負っているうちにストラップが両脇へ開いてしまって「ヨイショっ」と担ぎ直さなければならない場合があります。とくに「なで肩」の人は、シンドイですよね。でも「左右一体ユニット型」だと、ストラップの滑り落ちがほとんどなく、本体を背中へ吸い付くようにフィットさせてくれるため、荷物の重さを感じにくくて、とても楽な感じです。

次に「ストラップの設置位置」。よく見かけるのが、ストラップを「バッグの上端に縫い付ける」パターンですが、バッグが下にズリ落ちやすく、ちょっとだらしない姿になってしまいます。【TC420】では、ストラップユニットがかなり下の位置から飛び出しています。

これが「イイっ!」 ストラップを短くして背負ってみると、バッグ上部が頭の後ろまで上がります。この状態が高いと感じたら(たぶんみんなそう感じるはず)、両胸の下にある「長さ調節機能付きジョイント」を軽く前へ押し出してやると、ストラップがスルスルッと長くなります。逆に短いなと感じたら、調節ストラップの下端を持って「エイッ」と引っ張ってやります。するとバッグの位置がクイッと上がります。これ、ワンアクションでできるので、とても簡単便利。

きわめつけが「ショルダーストラップ収納」ですね。横位置で持ったり担いだりするとき、ショルダーストラップが邪魔になるのを防ぐため、ストラップを「完全に!」収納、隠すことができます。こうした機能はよくあるのですが、なかなか完璧に隠しきれないんです。注目は「下部ストラップ 隠れ身の術」。上の大きなストラップの収納ポケットは普通にあるので、そこに収納。「でも下の短いのがビロビロと残っちゃうじゃないの?」と思って、よぉく探したら……
ありました! 下端両端のいちばん隅っこに、小ぃーーさなスリットが。下のストラップを二つ折りにして、このスリットに押し込んだら……「なんということでしょー」。まるでどこにいったかわからない完全格納。いやぁ〜、よくできてますよ(軽く感動)。

バッグ内部も十分な設えです。ラケット収納コンパートメントは「サーモリフレックス」が温度上昇から守ります。「本当に必要かなぁ?」と考える人もいるでしょうが、これだけ大きいバッグだと、車のトランクに入れる場合もあるでしょう。真夏のトランク室内は、かなりの高温になりますから……という「気遣い」ですね。

荷物を入れるメインルーム内にはポケットが充実。内側に貼り付いて隠れている「間仕切りボード」を引き出して、反対側の面テープに固定すれば、大きな2つの部屋に分かれます。大型ポケットには15インチくらいのパソコンが収納でき、飛び出してしまわないようにと固定用ストラップも装備されています。

バッグの外側全面に、ファスナー付き大型ポケットが2つ並びます。このファスナーも「オールロックファスナー仕様」といって、重いものが入っても、その重みで自然にファスナーが開いてしまう心配がないロップファスナーなのだそうです。

ちょっとお値段は張りますが、1680デニールの丈夫で安心な素材と、あらゆる状況を想定して組み上げられた「配慮のかたまり」であることを考えれば、きっと長く使える相棒になってくれることでしょう。

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー