輝く白を纏う新【TOUR】は、結果を引き出すラケット。真珠のような上品さに隠された「過激な攻撃性」が、世界に先駆け50周年限定カラーでデビュー!

【TeXtreme】から【TeXtreme × Twaron】への歩み
〜 構造イノベーション + 素材イノベーション 〜

TOUR ATS

かつてプリンスというブランドは、『構造イノベーション』に執着していました。追求の結果として、あまりに独創的な「グロメットレス:MORE構造」を発明し、そのテクノロジーを「O3」にまで昇華させたのです。

【TOUR】シリーズが、本格的ボックス構造×競技系縦長フェイスとフルモデルチェンジを果たしたとき、素材にも目を向けるべきだというムーブメントから、新素材【TeXtreme】が導入されます。これについては、前号の後半を読み返してください。

そして次のテクノロジーが2017年秋に発売されます。その価値が認められてきた【TeXtreme】に、さらなる素材革命を巻き起こしたのです。【TeXtreme】は、素材テクノロジー的には「独奏曲」。それに【Twaron】(トワロン)が重ねられることで、ただ何かが加わっただけではない、新しい世界の広がりの実現……いわば「重奏曲」となったのです。

【Twaron】は、とても強靭な「アラミド系繊維」の一つで、ラケットに組み込まれることで、手に伝わる衝撃を少なくし、振動を発生させにくいという性格を与えてくれます。

ラケットの機能説明には、頻繁に「振動吸収」という言葉が使われ、プリンスの機能説明にも、この言葉がよく使われます。ただ個人的には、「発生してしまった振動を緩和する(吸収する)」のと「そもそも振動を発生させにくい」のとは違うと思ってきました。フレームにアラミド繊維が組み込まれるのは「振動を発生させにくい」特性があるからと思います。

さて、これまでもラケットフレームにアラミド系繊維を組み込んだものはたくさんありましたが、その狙いは主に「打球感をマイルドにする」もので、打球結果に大きく関与させることなど考えられていませんでした。

ところが【TeXtreme】に【Twaron】を組み合わせ、それをシャフト部に搭載してみたら、想定外の現象が観測されたのです。「柔らかい素材が入ったことで、インパクト直後のしなりは大きくなる(これは想定どおり)。ところが、しなりの限界から元に戻るスピードが明らかに速い」。この事実がわかったとき、プリンスの開発陣は色めき立ちました。「これは新しい世界が拓けるかもしれない」と。

どういうことかというと、しなることによって「球持ち感」は長くなります。通常は、その分だけ打球が出遅れてしまうのに、【TeXtreme × Twaron】では、しなりが戻るときにボールに強い加速が与えられて、一気に飛び出していくのです。

これは筆者の感覚ですが、「球離れが早い」というのとはちょっと違うように思います。「球離れが早い」というのは「硬くてしならないフレーム」が、短いインパクトタイムですぐにボールを弾き返してしまう現象などによく用いますが、【TeXtreme × Twaron】は、しなりが大きくて、インパクトタイムを長く感じさせる。なのに、打球を押し出す力がとても強くて速いのです。

しなりが大きいラケットというのは、しなりが戻りきる前にボールがストリング面から離れてしまうことが多い……つまり、しなりが戻る力のすべてを使っていないと思います。いっぽう【TeXtreme × Twaron】は、しなりが元に戻るのとボールが打球面を離れていくのがシンクロします。ということは、インパクトで生じる力のほとんどが打球に載っかっているわけですね。

【TeXtreme × Twaron】の評価は、ラリーの相手に訊け
〜 しなりを変えずに打球結果でパワーアップ 〜

2016年に発売された初代【TeXtreme】搭載モデルから【TeXtreme × Twaron】になったことで、しなりが大きい分だけ「ボールが出ていかない」と言うプレーヤーがいますが、それはあくまで「自分の感覚」であって、打球結果を表現しているのではありません。こうした感覚を後押しした要素として、打球音が低くする【Twaron】の効果が挙げられます。

趣味のテニスであれば「打球感」を内的に追求するのもアリでしょう。しかし競技者にとって、重要なのは「打球結果」です。好き・嫌いは置いといて、自分の打球が、いかに対戦相手を追い込めるか? こそ、競技者に必要なこと。その効果を知るには、ラリーを打ち合う相手に訊いてみるのがいいでしょう。

「自分のボールってどうなってる?」。……自分の好きなドレスが、誰から見ても素敵に見えるとは限りません。自分の趣味よりも、周りの人が「素敵ね!」と言ってくれるドレスこそ、あなたの魅力を最大限に引き出してくれる一着なのです。ラケット選びも同じことが……おっといけねぇ、話を元に戻しましょう。

【TeXtreme】という素材テクノロジーは「しなりを変えずに面ブレを抑制する」ことができ、【TeXtreme】非搭載に比べて25%も面ブレを抑えることができたのですが、なんと【TeXtreme × Twaron】にしたことで面ブレ30%減が記録されました。

これは単純に「コントロール性が高まった」というだけの話ではありません。面ブレというのは、フレームの揺らぎであり、エネルギーのロスなのです。つまり面ブレが少なくなるということは、エネルギーロスが少なくなり、その救われたパワーが打球結果に活かされるということ。普通は「フレーム剛性を高める」ことで達成しようとしますが、【TeXtreme × Twaron】では、これまでのシャフトのしなりを殺さずに実現できるのです。

どんどん硬くなっているラケットフレームの世界。それだけ打球衝撃も大きく、人体への累積ダメージも増している昨今、しなりで衝撃感を逃がし、その力を消してしまうのではなく、高い効率で打球へ返してあげる……だから「衝撃吸収」とは言いたくないのです。

2020→2021 プリンスのキーカラーは『純白』
〜 【TeXtreme × Twaron × ATS】 〜

キーカラー

そして2019年、さらに新しい【TeXtreme】テクノロジーを引っ提げて、パワー系競技モデル【BEAST】シリーズが登場します。今度は【TeXtreme × Twaron × ATS】。【ATS】というのは「アンチ・トルク・システム」。捩じれようとする力を制御するという意味でしょう。フェイスの斜め上、「2時」「10時」の位置に【TeXtreme × Twaron】が追加補強されました。

【TeXtreme × Twaron】は、シャフト部に搭載することで面ブレ抑制効果を高める技術ですが、それでもフレームトップ部分では揺らぎが残ります。その揺らぎを【TeXtreme × Twaron】によって押さえ込むのです。その結果、先ブレ減少→エネルギーロス減少→スピン量増加 & 推進力増加、そして打球感がクリアになったのです。打球音もやや高く、弾き出す感覚を強調することになりました。

なんだか「テキストリーム独奏曲」→「テキストリーム重奏曲」、そしてとうとう「テキストリーム協奏曲」になったような感じですね。機能が重ねられることで、音の厚みが増し、主旋律である【TeXtreme】が引き立ちます。

こうした技術が、純白の新【TOUR】シリーズに搭載されました。日本が世界に先駆け先行発売する純白【TOUR】は、プリンス50周年記念の特別バージョンとしてのデビュー。全身純白ではなく、フレームの内側だけが「黒」で、【O3】モデルは「O3ホール」の内側だけが黒です。

このホワイトは、遠くから見ると「純白」に見えますが、よく観察すると「パールホワイト」で、まさに真珠のような輝きです。どおりで「美しいっ!」と感じさせるわけです。この秋に発表された【TOUR】【EMBLEM】【Prince X】シリーズに、ホワイトをベースにしたモデルが続々登場。このご時勢に、クリーンで明るいイメージを与えてくれるキーカラーとして、まさにピッタリじゃないですか!

プリンスが、新【TOUR】シリーズの試打データを集めた結果、面白い現象が見受けられました。従来は「打球感がボヤけるから」と、【O3】モデルよりも通常モデルを選んでいたプレーヤーが、新【TOUR】シリーズでは「【O3】がイイね!」というケースが際立って増えていることです。【TeXtreme × Twaron × ATS】によってクリアになった打球感と【O3】システムとのバランスがいいようです。

ですから新【TOUR】シリーズに興味をお持ちの方は、プリンスの『DEMO・レンタル・プログラム』( https://www.princeshop.jp/shop/pages/racket_rental.aspx )を利用して、まずは全てのモデルを試してみてください。これまでの固定概念が動かされるかもしれません。競技モデルの試打では、まず固定概念や好みなどを捨ててみて、ひたすら「打球結果」にフォーカスしてください。それがマイベストを選び出すための鉄則ですよ!

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー