思わず泣いちゃうベテランプレイヤー続出。
「ドライらしいDRY」がプリンスから発売
【EXSPEED DRY】……DRYの最終進化型!

滑るグリップに苦心していた「あの時代」……
〜 勝つために巻いていた包帯テープ 〜

1970年代まで、テニス専門店に並ぶほとんどのラケットは「木製」でした。ところが1980年前後に起こった「世界的テニスブーム」に2つの大きなイノベーションが起こります。一つは「木製→カーボン:素材革命」であり、もう一つが「70inch2→110inch2:ラージ革命」。これがほぼ同時に起こったことで、テニスというスポーツの概念がガラッと変わりました。

カーボン系素材は、ラケットの軽量化を実現し、楽にボールを弾き返すことができるようにしました。さらにフェイスのサイズアップは、むずかしかったテニスを、誰もが簡単に楽しめるようにしたのです。このイノベーションをもたらしたのが「プリンスのデカラケ」だったわけで、現代のテニスがあるのは、「プリンスのおかげ」と言っていいと思います。

また、新しい道具も誕生します。第二次大戦前は、木製フレームがそのまま剥き出しになっていたグリップでしたが、戦後に「天然皮革」が巻かれるようになり、滑り止めと衝撃緩和におおいに貢献します。しかし天然皮革は、汗を吸っていくと、やがて硬くなるので、さらに包帯のような布テープを巻いて滑り止めとする選手が現われます。

これが「グリップテープ」の始まりですね。
すぐにボロボロになってしまう包帯テープは、少しだけ粘る液体を沁み込ませた「紙メッシュテープ」に替わっていきますが、すぐに「不織布ベース」にウレタンを塗布したテープへと進化します。それが今日の「グリップテープ」・「オーバーグリップ」の原型です。

現在、テニスラケットのグリップには、クッション性もグリップ性も高い「シンセティックグリップ」が巻かれています。そのままでも十分にプレーできるのに、ほとんどのプレイヤーが、まるで「しきたり」であるかのように、グリップテープを巻いて使います。それは「どんどん巻き直すことで、手軽にフレッシュな状態を保てるから」です。

さて、現代につながるグリップテープの元祖は「ドライタイプ」でした。多くのトッププロが使用したため、世界じゅうの若者がそれを真似しました。ただ、しばらく使うと「表面のウレタンが剥げて基布が毛羽立ち、ボソボソになる」んですね。プロはいつも新品に巻き替えてプレーできますが、我ら貧乏な学生は、テープを裏返して巻き直したりしました(恥ずかしいけど、そんなヤツが多かったです)。色だけは「なんとなく新しいテープ」のように見せかけることができますが、すぐにボロが出ます。昨今は、リッチなはずなのに、白かったテープが、すっかりネズミ色になるまで汚れても巻き替えずに握る方が多いことに、ガッカリさせられますけどね……

ついこないだまでの「ウェットタイプ大全盛」に変化が
〜 見直されている「ドライタイプ」 〜

「試合に勝ちたいなら、これを巻かなきゃ」と、青紫のテープが世界的に大流行しますが、少しすると「もっと滑らないぞ!」というグリップテープが登場します。それが「ウェットタイプ」。これまで「ウレタンをまばらに塗った」みたいな感じだったものが、塗り込められた感じに……。握った感触は、手のひらにペトーッと吸い付くようです。

とにかく「滑らない」! それはそれでありがたいのですが、当時はまだシングルハンドが主流で、「グリップチェンジを頻繁に行なうテニス」だったため、あまりにくっつき感が強すぎると、グリップチェンジしづらいからイヤだ というプレイヤーも少なくなかったんです。

でも「汗の吸収」機能はズバ抜けていましたし、両手打ちバックハンドのプレイヤーが多くなってくると、握り変えづらさを訴える人が減り、「ウェットタイプ大帝国」が世界を牛耳り始めます。21世紀になると、テニス専門店のグリップテープ売り場はウェットタイプで埋め尽くされ、ドライタイプは「マニアックな人向け」みたいに扱われるようになりました。

残っていても「セミドライタイプ」と呼ばれる「ウェットタイプとドライタイプの中間……の感じ」のものでしたが、まぁ「かなりウェットタイプに寄せた」感触ですから、「気持〜ちドライ」ってとこですかね。

ところがここ1〜2年、ドライタイプが見直されるようになり、「けっこうドライ!」といった感じのテープが登場し始めています。注目を浴びているのが、プリンスが新たにラインナップに組み込んだ【EXSPEED DRY】(エクススピード ドライ)です。

こいつ……かなりドライ感たっぷり!
巻いたのを握ると、「サラッサラ」じゃありませんか。これは、堂々と「オレはドライだ!」と大声で叫んでいるようです。これまでのドライタイプって、昔のアレのスタイルを踏襲している雰囲気モリモリでしたけど、これは新しいドライフィーリング。

ウェットタイプにも、さまざまなものがあり、いろんな工夫がされていますけど、やはり「ペトッとしていて、汗を多く吸うと、グジュグジュになる感じ」は残ります。対してこの【EXSPEED DRY】は、かなり汗を吸ってもサラサラ感を感じやすいんですね。

こりゃあ「ドライ好きにはたまらん!」です。
これが加わったことで、プリンスグリップテープは全タイプが揃い、好みの高性能グリップを選べるようになりました。

「使いづれーなぁ〜」の不満を解消する「日本人らしい企画魂」
〜 あちこちに感じるプリンスの細やかな気遣い 〜

これまでウェットタイプばかりだったせいで、ドライタイプに注目が集まっていますが、でもまだ、どこも「恐る恐る」なんです。筆者的にはセミウェットの領域に留まっているように感じていましたが……、【EXSPEED DRY】は、マジのドライです。プリンスさんも、よくここへ踏み出しましたね。

プリンスのグリップテープは、かなりのスグレモノで、以前にも紹介した【PHANTOM PROFESSIONAL TYPE】は、セミウェットタイプの最終型傑作と言っていい出来映えです。じつは他社のゲキ売れテープを使っていたプロコーチに「ちょっとコレを使ってみて感想を聞かせて」と渡したところ、「こっ、これからはオレ、これしか使いません!」と大絶賛をもらいました。グリップテープって、気に入ったのをずっと使い続ける……って人が多いですけど、プリンスの新製品が出たら、とりあえず『試すべき』です。

【EXSPEED DRY】のエンディングテープは【PHANTOM PROFESSIONAL TYPE】と同じ「プリンスグリーン」ですから、「最高モデルのドライ版」と考えていいでしょう。その証拠に、いろんな点で「微にいり細に入り」の気遣いが施されています。

まず「巻きやすさ」です。
従来のドライタイプは、テープの基布となる不織布に「伸び」がなく、グリップエンドの巻き始めに大きなシワができやすかったり、使っているうちにテープの端がめくれてきたりしました。ところが【EXSPEED DRY】は全体的に「伸び感」があって、きれいに巻けて、端がめくれたりせず、美しい巻き上がりで使えます。

次に「パッケージの袋」。そんなことを気にするヤツなんかいないよ……と言われるかもしれませんが、テープを袋から取り出すとき、ちょっと厄介に思うことがありました。袋を開けるときに、端をツマみにくいんです。
プリンスは、そんな些細なストレスを解消するため、ツマみ部分を「台形状」にして、簡単に端をツマめるようにしました。みなさんは「だからナニ?」って思うかもしれませんし、自分でテープを巻かない人には、何のこと言ってるのか理解できないでしょうけど、「長年 お決まりの袋の形態を変更する」のって、メーカーにとってはたいへんなことなんです。お決まり形状は「安く」仕入れられますが、この部分を変えるだけで「特注」となって、製造コストは上がるため、どのメーカーも「これまでどおり」を選びます。でもプリンスは、こんなところにも「ユーザーが使いやすいように」と心を配ります。
筆者は、こういうところが好きなんです。
まずは「1本入り」でいいですから、【EXSPEED DRY】を試してみてください。ドライ派には、きっと気に入ってもらえるはずです。

ただ一つだけ「巻くときの注意」があります。
通常のウェットタイプ・セミウェットタイプは、「巻いたときに表側になる面に」保護フィルムが貼られていますが、【EXSPEED DRY】は「裏側に」貼られています。

【EXSPEED DRY】のドライ感は「表側のウレタンにバフをかけ、薄ら削ることでツルツル感をなくす」工程によって作られますが、裏側も同じにすると、巻き重ね部分の密着度が低くなり、巻きズレが起きやすくなります。そのため、【EXSPEED DRY】は裏側がセミウェットくらいにツルツルしているのです。なので、普通とはまったく「逆」で、保護フィルムを剥がした側を裏にして巻くのです。

コレ、絶対に忘れないように!

松尾高司(KAI project)

text by 松尾高司(KAI project)

1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。 試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー